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コラム 2019年3月

相続法改正ポイント4 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

遺言関係のお話をかいつまんでします。

 

【自筆証書遺言の方式緩和】

改正民法968条ですね。こちらはすで施行されています。

 

現行民法では、自筆証書遺言は、前文、日付、氏名を自署しなければいけません。

遺言者の真意を確かめる、偽造・変造を防ぐという趣旨です。

財産がたくさんある場合には面倒ですよね。書き間違いも生じます。

 

改正民法では、相続財産(遺贈も含む)を特定する財産目録については、自署が必要ないとされました。次の条文です。

 

「改正民法第968条

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自署することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自署によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。」

 

パソコンで作ってもいいわけです。

登記事項証明書や預貯金通帳の写しを添付する方法でもいいと説明されています。

ただし、全てのページに署名・押印は要求されています。

なお、加除変更がある場合に遺言者の指示・署名・捺印が必要なのは本文と同じです。

 

【自筆証書遺言の保管制度】

民法改正自体の話ではないのですが、自筆証書遺言保管制度が創設されました。

法務局における遺言者の保管等に関する法律です。

自筆証書遺言は、公正証書遺言と異なって、家庭裁判所での検認手続が必要ですが、同制度を利用した自筆証書遺言は検認手続が不要となります。

検認手続により遺言の有効性が判断されるわけではないのですが(遺言の存在を確認するといった色彩の手続です)、検認手続を経ないと相続手続が進められません。検認手続が必要ないとすると楽なのです。

保管者は、法律の名称からわかるとおり、法務局です。事務を取り扱うのは遺言書保管官という舌を噛みそうな名称の方です。遺言者が自ら、住所地もしくは本籍地、または所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務局ですね)に出頭して、申請をしないといけません。勿論、一度保管してもらった遺言の保管を撤回してもらうこともできます。

新しい制度なので、使ってみないと使い勝手の良さはわからないですね。

 

なお、公正証書遺言と自筆証書遺言は検認手続が必要かどうかだけの違いではありません。

保管制度を利用した自筆証書遺言よりも、やはり公正証書遺言の方が確実です。

形式不備が基本的にはありませんし、遺言の有効性に関する判断においても公証人(法律の専門家出身がほとんどです)の意思確認を経由しているので公正証書遺言の方が確実です。

 

【遺言執行者】

改正民法1007条第2項で、遺言執行者が任務開始時の相続人に対する遺言内容の通知義務が定められました。

 

不明確あるいは争われることもあった、遺言執行者の法的地位を明確にした規定もできました。

改正民法1012条では、遺言執行者は遺言の内容を実現するため相続財産の管理その他の遺言に必要な一切の行為をする権利義務を有する、改正民法1015条は、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対して直接にその効力を生ずる、としています。

 

その他にも権限等に関する改正がありましたが、ややこしい話なので省略いたします。

遺言の内容と遺言執行者の権限はできるだけ明確に定めておくといいでしょう。

 

改正民法1016条では、遺言執行者の復任権が認められました。相続財産の内容や遺言の内容によっては親族の遺言執行者がご自分で手続を行うことが難しい場合があります。遺言執行者が弁護士等の専門家や法律や手続に詳しい親族の依頼できるということですね。

 

改正民法1013条です。

遺言施行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができません。

遺言で特定の相続人に対して承継させるように定められている不動産について他の相続人が相続登記をして第三者に処分したような場合ですね。

他の相続人の行為は無効です。それは現行法の解釈と変わりません。

しかし、善意の第三者に対して対抗することができないと定めました。上の例では先に登記を経た方が優先します。

また、相続債権者、相続人の債権者は、遺言執行者の有無にかかわらず、相続財産に対して権利を行使できることも定められました。

以前に説明したとおり、相続による権利移動はすべて登記等の対抗要件が必要とされました。遺言執行者がいる場合もそれは変わらないということですね。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

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自己破産に必要な費用 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理のうち、自己破産に必要な費用をご説明しようと思います。弁護士費用と裁判所に納める費用ですね。

 

まずは弁護士費用です。

 

弁護士に自己破産申立て代理を委任するならば弁護士費用が必要ですね。

個人申立て(司法書士関与も含めて)もあります。
基本的には弁護士に依頼した方がいいでしょう。それにより後にお話しする管財事件になる可能性が小さくなりますし、破産管財人を経験することにより手続に精通している弁護士に依頼する方がスムーズに事が進みます(破産管財人の経験がないと破産手続に精通はできません)。
勿論、すべての手続に代理人として同席できる弁護士がいた方が気持ち的にも安心でしょう。

 

弁護士費用は弁護士によっても案件によっても異なります。WEBページに事務所の費用目安が記載しています。

当事務所は25万円プラス消費税の金額を掲げています。広島では安い事務所だと言われたことが何度かあります。

勿論、安ければいいというわけではないです。自己破産に関する疑問をすぐに解消してくれ、問題点等を的確に指摘してくれる弁護士に依頼してくださいね。

 

弁護士費用を一度でお支払いできない場合には、通常、分割でお支払いいただく等の便宜を図ってくれます。弁
護士が受任すると債権者に受任通知を出し支払いを停止します、支払停止中に費用を用意していただくわけです。ボーナスで調整するという方も多いです。

勿論、個人事業主で手間がかなりかかる場合や、自由財産拡張対象可能範囲内に財産が収まらない場合には、もう少しいただくこともあります。
管財事件になるからといって自動的に金額を上げることはしていません。

弁護士費用のいただき方は、その方に応じて決めるしかありません。皆さんご事情が異なりますからね。依頼される弁護士とよく話し合ってください(時々、費用が払えないから弁護士に辞任されたと当職に改めて依頼される方もいらっしゃいます。支払可能な約束をしないといけません)。

ちなみに、個人再生も基本的には自己破産と同じ金額にしています。こちらも安いと言われますが・・・

 

法テラスの民事法律扶助制度を利用される方は、そちらで承ります。

法テラスの民事法律扶助とは、一定の資力要件を満たせば、弁護士費用を立て替えてくれ、立替金を5000円からの分割で償還できる制度です。

個人の自己破産の場合には、こちらを使われる方が多いです。費用が安いですから。債権者数によって金額が決まっているのですが、152,600円からです。
夫婦の同時申し立ての場合には夫婦割引もあります(夫婦でなくとも同一世帯である場合には夫婦割引と同じ扱いをする例もあります)。

ただ、弁護士費用を支払ってもらうことによって財産を少なくしておいた方が管財事件にならずトータルの支出が安くなる場合もありますのでご注意を。
また、法テラスを利用する場合には、すぐに弁護士が受任することができません。まずは法テラスへの申請に必要な書類を持って来ていただき、弁護士が申請書を作成して提出し、審査を経てから契約書をもらうため、通常2週間前後は受任が遅れます。早く受任通知を送ってもらって督促を止めたい場合には弁護士に相談しないといけません。

生活保護を受給されている方は、さらに使い勝手がいい制度になっております。
生活保護受給者は、法テラスへの償還が事件終了まで猶予されます。終了時にも生活保護を受給していた場合には償還の免除申請をすれば免除されます。おまけに官報代や管財事件になった場合の予納金まで法テラスの援助を受けることができます。自己破産の費用がほとんどかからないのです。

なお、免除申請には時間がかかります。それまでに生活保護受給者で亡くなった場合には償還をお願いされるケースも耳にしております。

 

次は裁判所の費用ですね。

自己破産には、同時廃止事件と管財事件があります。

破産法上は、管財事件が原則ですが、個人破産の場合には、割合的には同時廃止事件の方が多いです。
広島本庁では同時廃止が6割強から7割弱でしょうか。

 

同時廃止事件は、管財人が選任されない破産手続です。
その場合の費用は、官報掲載のための予納金と、債権者の数に応じた郵券(切手代)になります。

通常は15000円あれば足りるでしょう。

なお、個人再生の場合は30000円を用意してもらっています。

 

管財事件は多額の予納金が必要です。
なぜ多額の予納金が必要かというと、裁判所から選任される破産管財人に対する報酬を裁判所が支払わないといけないためです。

広島では、20万円(免責不許可事由が重大な場合の免責調査型管財事件や退職金の評価などが単純に基準を超えている場合)から30万円(不動産がある場合)がスタンダードです。

予納金は、申立時に用意しておくのが原則です。そのため、予納金の用意のために申立てが遅くなる例もあります。事実上数か月は待ってくれる場合もありますが、その間は破産開始決定が出されずに中途半端な状態が続きます。売却・解約できる資産を売却・解約して費用を捻出してもらうこともあります。

なお、個人再生において個人再生委員が選任される場合(こちらも弁護士が選任されます)の予納金は20万円がスタンダードかなと思います。

 

財事件になるケースが増えてきたように思います。
広島本庁では、現預金は50万円、その他各財産項目の評価額が20万円という基準があり(なお、価値が明らかに乏しい不動産以外の不動産がある場合には無条件に管財事件です)、退職金(現在自己都合退職をした場合の退職金支給見込額の原則8分の1が財産として評価されます。)や保険解約返戻金でひっかかるケースがあります。
5年以内に会社経営あるいは個人事業をしている方も管財事件になります。

申立時には、管財事件の扱いを受けないような方策を許される限りで工夫しているところです。

自己破産の費用面で心配をなされている方は、費用も含めて弁護士によくご相談くださいね。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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相続法制の改正ポイント3 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

遺留分に関する改正法のお話の続きです。

 

【金銭請求に一本化されました】

改正民法1046条1項のお話です。

改正民法1046条1項は、遺留分が侵害された場合、遺留分侵害額に相当する金銭支払のみの請求ができることとしました。
これは大きな改正ですね。

 

改正により、遺留分減殺請求権はなくなり、遺留分侵害額の(金銭)請求権に代わると説明もされています。
慣れ親しんだ言葉がなくなるのは寂しいです。

 

現行法の解釈では、遺留分減殺請求(遺留分減殺通知書を出します)により、当然に物権的効果が生じます(物権的効果とは例えば不動産の所有権から遺留分侵害分の持ち分が移転するというイメージです)。
例えば、相続不動産等については、受遺者・受贈者と遺留分権利行使者の共有状態が生じます。そこで、遺留分減殺請求訴訟では、まず原告が相続不動産の遺留分侵害分の持ち分移転請求をしなければならず(具体的には持分移転登記手続訴訟)、被告が不動産の持ち分を渡す代わりに金銭賠償を選択して(価額賠償権の行使をして)初めて、原告が金銭請求できる建前となっていました。
勿論、実際の解決は金銭解決による和解で終了することが多かったのですが。

折り合いが付かなければ、不動産等共有状態が作出する可能性があります。
改めて共有物分割請求による換価処分を求めなければ金銭解決あるいは終局的な解決が図れない事態も想定できました。

 

改正民法では、遺留分減殺権者が請求できるのは金銭請求のみとなっております。

現物で渡すのではなく、金銭で渡すということになります。現実に即した改正でしょう。
徒に共有関係を作出することは問題を大きくしかねません。

したがって、「遺留分減殺」を登記原因とする登記もなくなるとの説明もありました。

 

同族中小企業のオーナーの相続にも影響がありますね。

事業承継対策として遺言により後継者に株式を全部相続させても、やり方が悪ければ他の相続人遺留分を侵害します(遺留分侵害がないように遺産の構成及び遺言内容を整理するのが無難です)。他の相続人から遺留分減殺請求があると、理屈上、自社株式について望ましくない共有状態を作出することになってしまいます。

これに対して、改正民法では、遺留分減殺請求権者が請求できるのは金銭請求のみですから、不必要な共有状態を作出することがなくなります。

事業用資産についても同様のことが言えますね。

相続法改正には事業承継対策の効果もあるということでしょう。

 

遺留分侵害額の請求権は形成権であることは現行法の遺留分減殺請求権と変わりません。
請求権を行使して初めて金銭請求権が発生します。
期間制限があるため、内容証明郵便にて通知を行うことが通常です。

 

なお、金銭請求を受けても直ちに現金化できる相続財産がないと困りますね。

そこで、改正民法では、裁判所は、請求があれば金銭請求の全部または一部の支払について相当の期限を許与することができると手当をしています。

 

【遺留侵害額の算定方法】

改正民法1046条2項のお話です。

遺留分侵害額は次のように計算されます。

遺留分

- 遺留分権利者が受けた遺贈または特別受益

- 遺留分権利者が取得すべき遺産の価額

+ 遺留分権利者が承継する相続債務の額

です。


計算の枠組みは現行民法の解釈と変わりません。

 

遺留分額は、改正民法1042条の規定により、遺留分額を算定するための財産の価額×遺留分割合×遺留分権利者の法定相続分ですね。

 

寄与分は、遺留分制度においては考慮されません。現行法の解釈どおりです。そのような制度設計なので仕方がありません。

 

遺留分権利者が承継する相続債務の額は、法定相続分のことですね。
遺言に債務の承継方法の指定があっても、第三者である債権者には対抗できませんからそうなります。

ただし、改正民法1047条3項にて、遺留分侵害額の金銭請求を受けた者が相続債務の弁済等債務消滅行為をした場合には、消滅した債務の限度において、負担債務の消滅を請求できると手当がなされています。

それをすれば、被請求者の遺留分侵害額の請求権者に対する求償権(負担部分を超える債務を弁済すれば他の相続人に求償することができます。法的性質は不当利得返還請求権でしょうか。)は消滅します。遺留分侵害の金銭請求と被請求者の請求権者に対する求償権の相殺的処理を定めたものですね。

 

遺留分侵害の金銭請求に対する負担の順序】

改正民法1047条関係です。

遺贈と贈与があるときは受遺者が先に負担します。

遺贈あるいは贈与が複数ある場合には、同時になされたケースでは目的物の価額の割合に応じて負担します(遺言者が遺言に指定している場合はそれに従います)。
受贈者が複数あり同時になされていないケースでは、後の贈与を受けた者から順次負担します。

 

なお、死因贈与の扱いについては、明文化されず、解釈に委ねられます。
最高裁判例がなく争いがあるから明文化されなかったという説明を目にしました。

 

遺留分制度の改正に関するお話はひとまず終わりです。

ややこしい制度だったのですが、改正によりやや単純化されました。

 

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相続法制の改正ポイント2 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

遺留分制度の話です。2回に分けてお話します。

 

簡単に申し上げますと、遺留分とは、各相続人に最低限の遺産を承継する権利を認めたものです。生前の財産の処分は勿論、被相続人が遺言で自由に財産を処分することは自由です。しかし、相続人には一定の相続分を保障し(これが遺留分です)、意思表示をすれば遺留分を侵害する遺言や贈与について侵害する部分の効力を失わせて財産を取得させるというわけです。

 

単純なようで、実務上、計算や解決には苦労をする問題ではあります。

 

改正民法1042条から1049条のお話です。

 

【改正民法1042条】

遺留分割合は現在の解釈と変わりません。解釈の明確化のための条文です。

遺留分は、「遺留分を算定するための財産の価額」×遺留分割合です。

 

遺留分割合】

遺留分割合は、直系尊属(父母あるいは祖父母等)のみが相続人である場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1です。これが全体の遺留分になります。

相続人が数人いる場合には、各相続人遺留分は上記割合に自己の法定相続分の割合を乗じたものになります。健在である父母のみが相続人である場合、父母は各3分の1(全体の遺留分)×2分の1(各父母の相続分)の6分の1(各遺留分)ですね。配偶者と子2人が相続人である場合、配偶者は2分の1×2分の1の4分の1、子は各2分の1×4分の1の各8分の1ですね。

 

なお、兄弟姉妹は遺留分を有さないことは変更がありません。

そのため、お子さんがいないご夫婦が一方配偶者に自宅不動産等の財産を相続させる旨の遺言を書いておけば、一方配偶者が被相続人配偶者の兄弟姉妹との相続争いに巻き込まれることはありません。

 

遺留分算定のための財産の価格】

遺留分を算定するための財産の価額」は次のとおりの計算式で算出します。

 

「被相続人が相続開始の時において有していた財産の価額」 

+ 「贈与した財産の価額」

- 「(被相続人の)債務の全額」

ここも現行法とは変わりません(改正民法1043条1項)

 

【贈与した財産の価額】

遺留分を算定するための財産の価額」に算入される「贈与した財産の価額」について定めるのが、改正民法1044条です。

 

相続人以外の者に対する贈与については、相続開始前の1年間にしたものに限り、その価額が算入されます。ここは現行法から変更がありません。

相続人に対する贈与については、原則として、相続開始前10年間にしたものに限り、その価額(婚姻もしくは養子縁組または生計の資本として受けた贈与の額に限り-要するに「特別受益」ですね。)が算入されます。ここが変わりました。

 

いずれも、遺留分権者に損害を加えることを知って行われた贈与については贈与の時期の制限はありません。ただ、そのような事情が認められるケースは稀です。

 

相続人に対する贈与については、相続開始前10年以内にした贈与であっても特別受益に該当しない限り算入されません。扶養的な贈与などですね。

 

現行法の解釈として、相続人に対する特別受益は、判例で、特段の事情がない限り、期間の制限なく遺留分減殺の対象となっていました。それが相続開始前10年間のものに限定されました。取引の安全を考慮したということのようです。

 

なお、少し難しい話ですが、持ち戻し免除の意思表示は遺留分の規定に違反できず遺留分の計算においては効力を有しません。この点は現行法と変わりません。

 

さらに、「遺留分を算定するための財産の価額」の参入は相続開始前10年間の特別受益に限定されていますが、「遺留分侵害額」の算出においては特別受益の時期は限定されていないと説明されています。ややこしいですね、実際の計算方法はよくよく確認しないといけません。

 

改正民法1045条は、負担付き贈与の場合、贈与目的の価額から負担の価額を控除した残額を「遺留分を算定するための財産の価額」に参入することとしています。

また、不相当な対価をもってした有償行為(典型的な事例は、不動産を非常に安く売買した場合です。)については、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付き贈与とみなすと規定しました。

1000万円の不動産を100万円で売買した場合、遺留分侵害について双方悪意である場合ですが、負担付き贈与として扱い、贈与の目的1000万円から負担の価額100万円を控除した900万円を「遺留分を算定するための財産の価額」に算入するということです。

いずれも、解釈に争いがあった点を明文化した規定です。

 

遺留分に関してほかにも改正があります。次回に続きます。

 

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相続法改正ポイント1 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

民法(相続法)の改正がありました。2019年71日から順次施行されます。

 

ということで、相続法の改正点についてご説明しないといけません。今後、次かいつまんで説明させていただこうと思います。

 

【相続による権利変動に対抗要件が必要なことが明記された】

改正民法899条の2のお話です。相続により相続財産の相続人等への権利移転が生じますね。これを第三者に主張する場合の規定です。
想定できるのは、他の相続人が遺言や遺産分割結果を無視して法定相続分に応じて相続登記をして自分の持ち分を第三者に譲渡した場面、遺言があるあるいは遺産分割協議が成立したにもかかわらず登記をしていない間に他の相続人等が相続登記を代位登記して差押等をした場面でしょうか。
遺産に属する動産類の譲渡も理屈上はその範疇に入りますね。

 

権利の変動を第三者に主張するには対抗要件が必要です。
対抗要件とは、両立しない物権変動がある場合の優劣を決めるものです。不動産であれば登記、普通乗用車であれば登録ですね。
典型例は、二重に不動産が譲渡されたがどちらが所有者になるのか、という問題で、先に登記を得た方が勝ちます。

 

現在は、最高裁判例に従って、

遺産分割方法の指定(「相続させる」)旨の遺言による権利取得には対抗要件が必要ない

遺産分割や遺贈(「遺贈する」旨の遺言)による権利変動は対抗要件が必要である

とされています。

遺言書の書き方によって扱いが違うのです。相続させる旨の遺言による権利の承継は、登記をしなくても第三者に主張できていたのです。
他の相続人が勝手に法定相続分を譲渡してもそれは無効と言えるというわけです。

 

今回の改正では、遺言の場合も遺産分割の場合も統一して、相続分を超える権利の承継については対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとしました。
取引の安全を考慮したものと言われています。

 

改正相続法の施行により、「相続させる」旨も遺言があっても、登記をしないで放っておくのは危険になります
相続人
1人が相続共有登記を行いその持ち分を第三者に譲渡して登記をしてしまえば、受け継ぐはずであった不動産の一部が他人に渡ってしまいます。債権者が共有登記をして債務者の持ち分を差し押さえるということも考えられます。損害あるいは損失を被った分は当該相続人に請求できるのは当然ですが。

遺言がある場合も安心しないでできるだけ早く相続登記をするべきでしょう。

勿論、相続に限らず登記をしないで放置することは百害あって一利なしです。

 

債権を相続した場合も同様です。

 

可分債権(数字で分けられる債権ですね。金銭債権は基本的に可分債権です。)は相続開始と同時に法律上当然に分割されるという判例があります。


なお、預貯金も預貯金債権という債権の一種で可分債権ですが、特殊な扱いを受けます。
少し前までは、預貯金は当然分割されるから遺産分割の対象とはならない(審判で判断してもらえない)という不都合が生じていました(逆に、遺産分割が完了していなくても各相続人法定相続分に応じた預貯金の払戻請求権が認めらるという便宜はありました)。
しかし、最高裁は、預貯金債権については遺産分割の対象となる旨の判例を出しました。平成29年のことで、実務上影響が大きい判例でした。

 

預貯金債権以外の可分債権、例えば貸金返還請求権は、そのままの扱いとなります。

上記のとおり、すべての場合に法定相続分を超える権利の承継を主張するには対抗要件が必要となるわけです。

 

ここで問題がります。債権の第三者対抗要件は、譲渡人からの債務者に対する確定日付がある譲渡通知あるいは債務者からの承諾になります。

相続の場合に譲渡人に当たるのはすべての相続人です。でも皆で出せないことがありますね。

そこで、改正民法では、相続分を超える債権を承継する相続人が遺言あるいは遺産分割の内容を明らかにして単独で債務者に通知をすることで足りると手当をしています。

 

【可分債務の扱いの明文化】

改正民法902条の2の問題です。可分債務の扱いの明確化です。

 

可分債権の対概念の可分債務(数量的に分けられる債務ですね)も、可分債権と同様、共同相続人間で法定相続分に応じて分割承継されるとされます。
相続人の借金等、相続債務である金銭支払債務は基本的に可分債務です。

相続人に1000万円の相続債務があって相続人が子2人の場合、遺産分割をしなくても500万円の債務を承継していることになります。怖いですね。

 

遺言や遺産分割によって債務の分割割合を指定あるいは合意したとしても、債権者には対抗できません。債権者は当事者の合意に拘束されずに請求することができます。
一方、債権者から分割割合の指定あるいは相続人間の合意の内容に従って請求することも許されるとされていました。

 

改正民法902条の2はその考え方を明文化した規定です。

 

債権者は、その気になれば法定相続分に応じた弁済を各相続人に要求できます。
遺産分割協議を進めるにあたっては、この点を前提としなければなりませんね。
債務の整理をどうつけるか、それに応じて資産の配分をどうするのか、意識して合意をしておかなければなりません。

 

遺言、遺産分割、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

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臨時休業のお知らせ【平成31年3月21日(祝日)】

平素よりお世話になっております。
明日、平成31年3月21日の祝日でございますが、弁護士不在のため臨時休業とさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたします。
なかた法律事務所 弁護士 仲田 誠一

民法改正講座1 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。

民法は私法関係(私人と私人の間の法律関係)を規律する基本法です。

我々弁護士も最も活用している法律といえるでしょう。大事な法律なので、順次、改正点をかいつまんでですが、説明させていただこうと思います。

 

【意思能力の明文化】

第3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

 

意思能力に関する新しい条文です。
これまでも、意思能力を欠く者がした法律行為は無効であるとされていました。改めて明文化したということになります。

 

意思能力が問題となるのは、成年後見制度を利用していないが認知症等で判断能力がない方、あるいは泥酔・薬物などによる一時的な能力の喪失のケースでしょうか。

実務上は、意思能力がなかったとはなかなか認めてもらえません。高齢者の消費者被害などしか使わないかもしれません。
判断能力がなくなった場合には成年後見を開始しておいた方が無難です。

 

なお、意思能力は問題となる法律行為ごとに判断される傾向にあります。
その行為によって必要な能力は異なりますからね。

勿論、意思能力がないとは認められない場合でも、本人の意思決定過程に問題があるのであれば、金融トラブルなどの際の適合性原則違反、説明義務違反(専門家責任)、錯誤、詐欺等を主張して契約の効力を争う、あるいは解除をすることを主張することになります。

 

【錯誤】

旧95条

意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

新95条

1 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくもので、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な物であるときは、取り消すことができる。

 ① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

 ② 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

2 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項による意思表示の取消しをすることができない。

 ① 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

 ② 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき

4 第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

 

まず、錯誤の効果が無効から取消しに変更されました。

無効は最初から法律行為の効力が発生しない、取消しは取り消された初めて法律効果が遡ってなくなるという理論上の違いがあります。
実務上、一番大きい違いは、取消しには取消し通知が必要ですが、無効は当然無効ですので通知行為は必要ないです。
錯誤も、詐欺等ほかの規定と平仄を合わせて(意思決定過程に瑕疵がある点は同じですからね)、今回取消しに変更されました。

 

その他の変更点は、判例法として既に確立している点、講学上争いがない点を明文化したものです。
基本的には、旧法の解釈と変わらないのであろうと思います。

 

錯誤とは勘違いですが、重要な事項に関する勘違いでなければなりません。
契約の目的や社会通念(常識)から、錯誤がなければ本人も普通一般人もその意思表示をしなかったであろうと考えられる重要なものでなければなりません。

 

また、実務上錯誤が出てくるのは、ほぼ動機の錯誤と言われるものです。
その内容の契約をすることについては勘違いがないが、その基礎事情(動機)に勘違いがあるということですね。
それが明文化されました。従前の解釈と同様、動機の表示が必要とされています。
この点は、契約書やパンフレット等から黙示に表示されていても動機の表示がありとされ得ます。

 

実務上、錯誤は、説明義務違反による解除、損害賠償請求、詐欺による取消し、消費者契約法が使えるときには消費者取消権の行使、と一緒に主張することが多いです。
相手方から何らかの不適切な情報提供などによる意思決定への不当な働きかけがあり、本人が騙された!と感じるケースですね。
当職が現在携わっている違約金充当合意の効力を争う控訴審でも、錯誤の有無が争点となっております。一審ではあまり争点とはならなかったのですが、裁判官によって焦点の当て方が異なることは珍しくはありません。

 

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広島の弁護士 仲田 誠一

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家計収支表の作り方など [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理のうち、自己破産、個人再生では、家計収支表の裁判所への提出が必要です。
広島では、自己破産では申立て直近2か月分、個人再生では直近3カ月分です(個人再生の場合には通常申立後も再生計画提出まで作成して提出します)。

家計収支表は、家計簿を月単位でまとめたものです。

 

家計収支表はなんのために提出するのか?

自己破産、個人再生の目的は、経済的更生です。経済的に立ち直るための制度です。そのために債権者の財産権を奪う制度が正当化されるのです。
そのため、家計収支表を経済的更生が図られるのかという観点で見られます。単月収支が赤字の場合には、自己破産、免責決定によって本当に経済的更生が図られるのかが吟味されます。

また、免責不許可事由(浪費等)のチェックにも利用されます。支出金額が大きい項目については内訳等を聞かれることがあります。個人再生の場合は弁済計画の履行可能性を見られることになります。
さらに、財産に報告漏れがないか、債務の計上漏れがないかのチェックにも利用されます。
加えて、破産の要件である支払不能状態、個人再生の要件の支払不能状態への危険の確認にも使われます。

 

なお、家計収支表は、家計を見つめなおしていただくツールとしての機能もあるでしょう。自己破産や個人再生に至る方の中には、家計管理が杜撰であった点が否めない方もいらっしゃいます。家計収支表を作成すると、自分が何にいくら使っており、毎月これだけの支出があるということに気付きます(依頼者の方にも毎月こんなにお金がかかっているんだと反省される方が多いです)。家計収支表を見ながら、さらに、この点は使い過ぎだ、ここを改善しようと考えることができますね。
このように、自己破産、免責決定後あるいは個人再生計画認可後の経済的更生のために家計管理を見つめなおしていただく意味も大きいです。免責あるいは個人再生計画認可を得られたら5年あるいは10年金融機関の審査が通りません。収入の範囲内で堅実に生活していただかなければなりません。

 

家計収支表には家族の誰まで入れるのか?

同居の親族の収入と支出をどこまで入れるかの問題です。同居の親族の収入証明資料は必要書類に入っていますが、支出を把握することが難しい場合もありますね。

同居の親族分の収支は、基本的に記載することになります。同居をしていたら通常は家計が一緒ですからね。家計が一緒とは財布が一緒といってもいいです。

ただ、いざ作成しようと思うと悩みます。

ケースバイケースの判断になるのですが、説明ができるように記載するということになります。説明がきちんとつけばどのように記載しても書き直せとは言われません。

財布が完全に別の場合には、単独の家計収支表を作成することもあります。

家計は別であるが、お金の授受(家賃代わりの〇万円など、援助など)がある場合には、それだけ家計収支表に組み入れて作成するということもあります。

どういう風に作成するのかは、自己破産申立て準備の前に弁護士と相談しておいた方がいいですね。

 

金額をどこまで正確に書くのか?

食費などいちいち記録することが難しいものは60,000円等丸まった数字(ラウンドナンバー)で記載しても問題ありません。

これに対し、公共料金など通帳あるいは領収書を保管していれば正確な金額が記入できるものは正確に記入してもらいます。通帳や公共料金の領収書は提出書類にもなります。

なお、あくまでもお金(通帳も含めて)の動きの報告です。水道料金、年金、児童手当など〇カ月に1回支出あるいは収入があるものは、該当月に支出額あるいは収入額(入金額)をそのまま書きます。月平均で書くわけではありません。給料は手取り額(入金額)を記載します。

後から作成するのは面倒くさいですので、少なくとも準備期間中は家計簿を作成することをお勧めしております。

 

その他注意点は?

電話代は抑えるようにお願いしております。金額が高いと、利用明細などの提出を要求され支払の内訳を確認される可能性があります。1台当たり1万円をちょっと出るくらいなら何も言われませんが、3万円とかであると裁判所から補正連絡が来ます。その際に端末料金の割賦払いが入っていると、それは債務なのではないのかと突っ込まれ、破産債権者として扱えと言われたら困ります。

 

保険料は契約者名義を記載することになっております。同居の親族契約の保険料が載っていると(あれば載せないといけないのですが)、保険証券を確認したいから提出しろと言われることがあります。ガソリン代も同様ですね。車両名義を記載することになっております。こちらは親族所有車両かどうか確認するために、ほぼ確実に車検証の提出を求められるので、最初から出すようにしています。

 

駐車場代を記載する場合、駐車場を借りているのであれば、賃貸借契約書が提出書類になります。お気を付けください。

 

交際費、娯楽費については、その内容を弁護士に説明できるようにしておいてください。内容の記載あるいは説明が求められます。

 

返済欄については、受任通知後にご自身の債務の返済があったらおかしいことになります。必ず突っ込まれると思ってください。同居人の返済の記載がある場合も、同居人の債務額を聞かれることが多いです。

 

なお、家計収支表の各項目の名称は変えてもかまいません。きちんと説明ができればいいわけですから。

今回は、自己破産、個人再生で提出しなければならない家計収支表のことについてお話ししました。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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租税憲法と租税回避行為 [税法の話2]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回は租税憲法と租税回避行為についてのお話です。

 

【租税法律主義】

租税法律主義は、憲法84条、30条に定められています。

租税を課すには法律の規定が必要なことは、国民の財産権を定める憲法29条から当然です。
課税権の制限が立憲主義の原動力となったという歴史的背景があって、憲法に2条も規定がおかれているのです。
そのため、租税法律主義は、刑罰権の制限である罪刑法定主義と同様非常に大事な原理になります。

考え方も罪刑法定主義とパラレルですが、財産権の制限という性質上、罪刑法定主義ほどは厳格に解釈されません。

租税法律主義は、課税要件法定主義、課税手続法定主義、課税(租税)要件明確主義、合法性の原則、租税法規不遡及の原則を要請するとされます。

なお、無限定ではないですが、法律には条例も含まれます。

 

課税要件法定主義

課税要件は法律で定められなければいけません。当然ですね。政令、省令などに、重要な点を丸投げしてはいけません(包括委任の禁止)。

課税要件とは、①納税義務者、②課税物件(対象行為、物、事実)、③課税物件の帰属、④課税標準、⑤税率です。

税務通達は、国税庁長官から職員に対して発出される命令(国家行政組織法14Ⅱ)にすぎません。法令解釈通達、執行通達、事務運営指針(加算税通達)です。法律とは扱われません(通達課税の禁止)。法律ではなく通達による課税」ということになれば違法になります。

ただし、法律に何ら根拠のないレベルにあることが実務上要請されます。判例でも、「課税がたまたま通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、法の根拠に基づく処分」とされています。裁判にあたっては、あくまでも法律の解釈がなされます。通達は参考規定にすぎません。通達に沿った課税は、根拠法令の立法趣旨に照らして合理性を厳格にチェックされます。

 

課税手続法定主義

課税要件だけ法律で定められていても、課税手続が法律で定められなければ適正手続が保障されません。
課税手続も法定されることが要請されます。罪刑法定主義と同じです。

 

課税(租税)要件明確主義

租税法の定めはなるべく一義的で明確でなければいけません。

曖昧な規定では、租税法の

①公権力の濫用防止機能、

②予測可能性、法的安定性確保機能、

を果たせません。
租税負担の増大化、及び経済活動の高度化・複雑化に伴い、租税法律関係の予測可能性と法的安定性の確保が重視されるべきとも言われます。申告納税制度ですから、租税法は国民のマニュアルですからね。

したがって、租税法解釈をする際には、文言の明確性を崩さない手法をとらなければいけません。拡張解釈は許されません。現実には、「(不)相当」「正(不)当」などの文字からは具体的にどういう場合に適用されるかわからない「不確定概念」が多用されています。担税力に応じた実質的公平をはかるためには合理性があり、法の趣旨・目的からその意義が明確化できるなら問題がないとされます。

 

合法性の原則

課税庁は、課税要件が充足されている限り課税するべきで、恣意的課税・徴収は許されません。法律の規定どおり課税しろということです。

したがって、課税庁は融通が利きませんし、裁判でも和解ができないとされます(ただし、合法性の原則の論理的な帰結ではないとされますが)。

 

租税法規不遡及の原則

課税するには法律の定めが必要ならば、法律ができる前の行為には適用されないはずです。ただし、罪刑法定主義とは異なり、合理性がある限りで遡及適用も許されるとされます。

所得税の分野で、特措法改正による長期譲渡所得損益通算不可とする改正を年度の初めに遡って適用した事例の判例があります。

最高裁は、合理的制約は許容されることを前提に、 駆け込み防止という合理的必要があり、所得税が期間税であること(既に発生した納税義務の内容を変更ではない)、報道等により予測可能だった等から、遡及適用を是認しました。ぎりぎりの例ではないでしょうか。

 

【租税公平主義】

憲法14条1項の平等原則から導かれます。「担税力」(納税能力)に即した課税を要請します。

所得税法における所得分類、超過累進課税がその最たる例です。
所得税では所得の種類(10種類)によって課税の仕方が違います。所得の種類によって担税力が違うということを根拠にしています。
超過累進課税制度も、勿論担税力に応じた課税の制度です。

  

【租税法律主義と租税公平主義の相克、租税回避行為】

租税法律主義と租税公平主義は場合によっては相克します。

法律の不備は立法で解決するか、公平を期すために租税法を柔軟に解釈して解決すべきかの問題です。
前者では文理解釈が要請されますし、後者だと目的論的解釈、拡張解釈が要請されます。ほかにも、通達への対応、規定がない場合の否認を許すか、についても対立します。

租税法律主義が憲法にはっきり定められている大事な原則である以上は、基本的には租税法律主義が優先します。

 

租税法律主義と租税公平主義の相剋の典型的な場面として、租税回避行為への対応があります。

節税とは、租税法規が予定した法形式を用いることです。軽減特例の利用などです。
脱税とは、課税要件充足事実そのものを秘匿することです。
租税回避行為は、節税でも脱税でもありません。

①通常のものと考えられている取引形式とは異なる取引形式を選択し

②通常の取引形式を選択した場合と同一またはほぼ同一の経済的効果を達成し、

③租税上の負担を軽減または排除することです。

税負担軽減目的は前提ですが、脱税という違法行為ではないのですね。

 

昔の典型的な例は、土地売買にかかる譲渡所得税負担軽減を目的として、お金が欲しい人が土地を欲しい人に対して極めて長期の地上権設定し、土地を欲しい人がお金を欲しい人に対して弁済期を地上権の終期とする時価相当額の金銭の貸付を行う。地代と利子は同額、一方的更新可能の例です。現在では通用しませんが。

 

様々な租税回避行為が、「節税スキーム」と称されて次々に考えられています。

法律を変えるのは大変、法律の抜け道を考えるのは簡単、ということで、いたちごっこになります。
そこで、法律の改正をしないで、当事者が用いた法形式を租税法上は無視し、通常用いられる法形式に対応する課税要件が充足されたものとして扱うこと(税法上の否認)が許されるかが問題となります。租税回避行為の否認の問題です。

 

租税法律主義の下では、法律の個別否認規定によらない否認は認められません。

租税公平主義からすれば似たようなことをしている者同士は同じ課税をするべきということになりますが、租税法律主義が優先します。

租税法律主義の下においては当事者の選択した法形式を通常用いられる法形式に引き直し、それに対応する課税要件が充足されたものとして取り扱う権限が課税庁には認められていないのですね。

 

現在では、個別否認規定によらない否認は認められないことを前提として、私法上の法形式を租税法上もそのまま容認するかどうかが争われる傾向のようです(事実認定による否認)。

 

上の例では、地上権設定を売買として課税するというのではなく、私法上の契約が売買と認定される、売買と認定される以上は譲渡所得課税するという理屈です。法律解釈論(この場合も当該規定が適用されるか)ではなく事実認定(この場合はどんな契約が成立したか)で解決するイメージです。

 

租税の争いなのに、民法あるいは商法等の私法上どのような契約が成立したかの解釈で決着がつけられることになります。
勿論、簡単に認められません。私法上、法形式選択の自由が認められるのでどんな形式を遣おうが自由ですから。

 

次回は租税とは、租税法とは、といったお話です。そのあと所得税法のお話に入ろうと思っています。

 

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債権者一覧表に漏れがあった場合 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

自己破産、個人再生の際の債権者一覧表に一部債権者の漏れがあった場合についてお話しします。

 

あってはならないことですが、稀に起きることがあります。

債権者数が多い場合、しばらく支払えていない場合、保証債務や個人間の債務など請求がまだ来ていない債務がある場合、代位弁済・債権譲渡が続き債権者を把握できていない場合などが考えられます。

 

債権者の督促状が来ていない、しばらく口座引き落としもない、という場合には、依頼者が弁護士に伝えない限り、弁護士が把握できないですね。

勿論、弁護士事務所等の単純なミスで債権者一覧表にある債権者が漏れる可能性もあります(あってはいけないことですが)。

 
自己破産、個人再生手続の途中で債権者の漏れが判明した場合はどうするのでしょうか。

 

その場合には、債権者一覧表を補正して債権者を追加すればいいです。

なお、手続の途中で督促状等債権者からの連絡が来た場合は、債権者一覧表にその債権者が記載されていない可能性が高いので、弁護士に確認をしてください。

 

債権者一覧表に記載漏れがあったまま自己破産、個人再生手続が終わった場合はどうなるのでしょうか。

 

自己破産の場合、非免責債権を定める破産法253条1項6号に、

「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)」

と定められています。

 

非免責債権とは、破産免責の効果が及ばず破産者がその弁済責任を免れない債権です(ということは債権者が法的に請求を継続することができます)。

「債権者名簿」とは、債権者一覧表を指すと思ってください。債権者一覧表に知りながら債権者を記載しなかった場合には非免責債権として免責対象外になってしまうのです。

 

裁判所は債権者一覧表の記載に基づき債権者に通知を行います。記載漏れがあると、当該債権者は免責についての意見申述をする機会を奪われるなどの不利益を被ることから、非免責債権として債権者を保護する趣旨と説明されます。そのため、債権者が破産開始決定のあった事実を知っている場合には債権者を保護する必要がないので非免責債権になりません。

 

「知りながら」とありますが、記載漏れ自体が破産者の過失による場合であっても非免責債権になるとされています。怖いですね。
破産者が無過失で記載を漏らした場合にはその債権者に免責の効果が及ぶということになります。

 

確たる判例がありませんが、当たった下級審裁判例でも、

「債権者名簿に記載されなかったことが破産者の責めに帰することのできない事由による場合にまで非免責債権とすることも相当ではない。そうすると、債権者名簿に記載されなかった債権について、債権の成立については了知していた破産者が、債権者名簿作成時に債権の存在を認識しながらこれに記載しなかった場合には免責されないことは当然であるが、債権者名簿作成時には債権の存在を失念したことにより記載しなかった場合、それについて過失の認められるときには免責されない一方、それについて過失の認められないときには免責されると解するのが相当である」

「破産者が、債権の存在を知って債権者名簿に記載しなかった場合のみならず、記載しなかったことが過失に基づく場合にも免責されないと解すべきである。」

などとされています。

 

過失がない場合というのは、長年請求も来ておらず破産者が債権者であるとの認識がなかったなど、破産者がその債権者を記載をしなかったとしてもやむを得ないケースに限られるでしょう。

制度趣旨からは、免責の及ぶ場合を拡げる方向で解釈してもいいように思います(債権者が手続関与をしても免責結果は変わらないと思われる場合など)。

 

しかし、裁判例を見ると免責の効果が及ぶのは例外的な取り扱いのようです。記載漏れがあると基本的には免責の効果が及ばないと覚悟をした方がいいですね。

 

記載漏れがあった債権者から請求があった場合には、とりあえず破産免責決定書の写しなどで破産免責を受けたことを説明することになります。

それに対する対応は債権者が考えることになります。非免責債権かどうかというのは債権者が主張すべきことですからね。

 

債権者が金融機関の場合は、破産開始決定通知、免責決定通知を送って破産免責を得たことを説明すると、免責処理をしてくれる、すなわち請求をしないケースが多いと言われます。実際、当職もOKを貰ったことがあります。ただ、ケースバイケースの判断なのでしょう。

 

自己破産の場合は、債権者の記載漏れがないかよくよく確認しないといけないですね。

 

なお、破産者が主債務者である場合の保証人、あるいは保証債務者である他の保証人の求償権については、債権者一覧表に記載がない場合にも免責の効果が及ぶのか議論があるようです。広島では保証人や他の保証人を債権者一覧表への記載を指導されております。

 

続いて、個人再生の場合に認可決定後に債権者漏れが発覚したときはどうでしょうか。

こちらは割合傷が浅いです。認可された再生計画の再生債権の弁済率に応じて漏れていた債務を弁済するということになります。
ただし計画に基づくと期限が来ている弁済分は一括弁済となります。

こちらもやはり債権者漏れは怖いですね。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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