• 刑事事件
  • 所属弁護士
  • 用語集
  • よくある質問
  • コラム
  • リンク集

HOME > コラム > 10ページ目

コラム 10ページ目

破産、個人再生の家計収支表の作り方など [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の借金問題コラムは、債務整理のうち、自己破産個人再生で必要な家計収支表の作り方などのお話です。

家計収支表は、家計簿を月単位でまとめたものです。
各裁判所で書式が用意されています。

広島本庁では、自己破産では申立て直近2か月分、個人再生では直近3カ月分の家計収支表の提出が必要です。
個人再生の場合には多くは申立後も再生計画提出まで作成して提出しますし、破産でも管財事件の場合には破産管財人から継続的な作成・提出を求められることがあります。

 

家計収支表はなんのために提出するのか?
 

自己破産個人再生の目的は、経済的更生です。経済的に立ち直るための制度です。そのために債権者の財産権を奪う制度が正当化されるのです。
そのため、家計収支表を経済的更生が図られるのかという観点で見られます。
単月収支が赤字の場合には、自己破産、免責決定によって本当に経済的更生が図られるのかが吟味されます。


また、免責不許可事由(浪費等)のチェックにも利用されます。
支出金額が大きい項目については内訳等を聞かれることがあります。

個人再生の場合は弁済計画の履行可能性を見られることになります。

さらに、財産に報告漏れがないか、債務の計上漏れがないかのチェックにも利用されます。
破産の要件である支払不能状態、個人再生の要件の支払不能状態への危険の確認にも使われます。

 

なお、家計収支表は、家計を見つめなおしていただくツールとしての機能もあるでしょう。
自己破産個人再生に至る方の中には、家計管理が杜撰であった点が否めない方もいらっしゃいます。
家計収支表を作成すると、自分が何にいくら使っており、毎月これだけの支出があるということに気付きます(依頼者の方にも毎月こんなにお金がかかっているんだと反省される方が多いです)。家計収支表を見ながら、さらに、この点は使い過ぎだ、ここを改善しようと考えることができますね。

このように、自己破産、免責決定後あるいは個人再生計画認可後の経済的更生のために家計管理を見つめなおしていただく意味も大きいです。
免責あるいは個人再生計画認可を得られたら5年あるいは10年金融機関の審査が通りません。収入の範囲内で堅実に生活していただかなければなりません。

 

家計収支表には家族の誰まで入れるのか?
 

同居の親族の収入と支出をどこまで入れるかの問題です。同居の親族の収入証明資料は必要書類に入っていますが、支出を把握することが難しい場合もありますね。

同居の親族分の収支は、基本的に記載することになります。同居をしていたら通常は家計が一緒ですからね。家計が一緒とは財布が一緒といってもいいです。


ただ、いざ作成しようと思うと悩みます。

ケースバイケースの判断になるのですが、説明ができるように記載するということになります。説明がきちんとつけばどのように記載しても書き直せとは言われません。

財布が完全に別の場合には、単独の家計収支表を作成することもあります。


家計は別であるが、お金の授受(家賃代わりの〇万円など、援助など)がある場合には、それだけ家計収支表に組み入れて作成するということもあります。


どういう風に作成するのかは、自己破産申立て準備の前に弁護士と相談しておいた方がいいですね。

 

金額をどこまで正確に書くのか?


食費などいちいち記録することが難しいものは60,000円等丸まった数字(ラウンドナンバー)で記載しても問題ありません。


これに対し、公共料金など通帳あるいは領収書を保管していれば正確な金額が記入できるものは正確に記入してもらいます。通帳や公共料金の領収書は提出書類にもなります。


なお、あくまでもお金(通帳も含めて)の動きの報告です。水道料金、年金、児童手当など〇カ月に1回支出あるいは収入があるものは、該当月に支出額あるいは収入額(入金額)をそのまま書きます。月平均で書くわけではありません。給料は手取り額(入金額)を記載します。
 

後からまとめて作成するのは面倒くさいですので、少なくとも準備期間中は家計簿を作成することをお勧めしております。

 

その他注意点は?
 

電話代は抑えるようにお願いしております。金額が高いと、利用明細などの提出を要求され支払の内訳を確認される可能性があります。
1台当たり1万円をちょっと出るくらいなら何も言われませんが、例えば3万円とかであると裁判所から補正連絡が来ます。
その際に端末料金の割賦払いが入っていると、それは債務なのではないのかと突っ込まれ、破産債権者として扱えと言われたら困ります。

 

保険料は契約者名義を記載することになっております。
同居の親族契約の保険料が載っていると(あれば載せないといけないのですが)、保険証券を確認したいから提出しろと言われることがあります。
ガソリン代も同様ですね。車両名義を記載することになっております。
こちらは親族所有車両かどうか確認するために、ほぼ確実に車検証の提出を求められるので、最初から出すようにしています。

 

駐車場代を記載する場合、駐車場を借りているのであれば、賃貸借契約書が提出書類になります。お気を付けください。

 

交際費、娯楽費については、その内容を弁護士に説明できるようにしておいてください。内容の記載あるいは説明が求められます。

 

返済欄については、受任通知後にご自身の債務の返済があったらおかしいことになります。
免責不許可事由あるいは否認対象の偏頗弁済として必ず突っ込まれると思ってください。
同居人の返済の記載がある場合も、同居人の債務額を聞かれることが多いです。

 

なお、家計収支表の各項目の名称は変えてもかまいません。きちんと説明ができればいいわけですから。

今回は、自己破産個人再生で提出しなければならない家計収支表のことについてお話ししました。

 

債務整理(任意整理民事再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


租税憲法と租税回避行為 [税法の話2]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回は租税憲法と租税回避行為についてのお話です。

 

【租税法律主義】

租税法律主義は、憲法84条、30条に定められています。

租税を課すには法律の規定が必要なことは、国民の財産権を定める憲法29条から当然です。
課税権の制限が立憲主義の原動力となったという歴史的背景があって、憲法に2条も規定がおかれているのです。
そのため、租税法律主義は、刑罰権の制限である罪刑法定主義と同様非常に大事な原理になります。

考え方も罪刑法定主義とパラレルですが、財産権の制限という性質上、罪刑法定主義ほどは厳格に解釈されません。

租税法律主義は、課税要件法定主義、課税手続法定主義、課税(租税)要件明確主義、合法性の原則、租税法規不遡及の原則を要請するとされます。

なお、無限定ではないですが、法律には条例も含まれます。

 

課税要件法定主義

課税要件は法律で定められなければいけません。当然ですね。政令、省令などに、重要な点を丸投げしてはいけません(包括委任の禁止)。

課税要件とは、①納税義務者、②課税物件(対象行為、物、事実)、③課税物件の帰属、④課税標準、⑤税率です。

税務通達は、国税庁長官から職員に対して発出される命令(国家行政組織法14Ⅱ)にすぎません。法令解釈通達、執行通達、事務運営指針(加算税通達)です。法律とは扱われません(通達課税の禁止)。法律ではなく通達による課税」ということになれば違法になります。

ただし、法律に何ら根拠のないレベルにあることが実務上要請されます。判例でも、「課税がたまたま通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、法の根拠に基づく処分」とされています。裁判にあたっては、あくまでも法律の解釈がなされます。通達は参考規定にすぎません。通達に沿った課税は、根拠法令の立法趣旨に照らして合理性を厳格にチェックされます。

 

課税手続法定主義

課税要件だけ法律で定められていても、課税手続が法律で定められなければ適正手続が保障されません。
課税手続も法定されることが要請されます。罪刑法定主義と同じです。

 

課税(租税)要件明確主義

租税法の定めはなるべく一義的で明確でなければいけません。

曖昧な規定では、租税法の

①公権力の濫用防止機能、

②予測可能性、法的安定性確保機能、

を果たせません。
租税負担の増大化、及び経済活動の高度化・複雑化に伴い、租税法律関係の予測可能性と法的安定性の確保が重視されるべきとも言われます。申告納税制度ですから、租税法は国民のマニュアルですからね。

したがって、租税法解釈をする際には、文言の明確性を崩さない手法をとらなければいけません。拡張解釈は許されません。現実には、「(不)相当」「正(不)当」などの文字からは具体的にどういう場合に適用されるかわからない「不確定概念」が多用されています。担税力に応じた実質的公平をはかるためには合理性があり、法の趣旨・目的からその意義が明確化できるなら問題がないとされます。

 

合法性の原則

課税庁は、課税要件が充足されている限り課税するべきで、恣意的課税・徴収は許されません。法律の規定どおり課税しろということです。

したがって、課税庁は融通が利きませんし、裁判でも和解ができないとされます(ただし、合法性の原則の論理的な帰結ではないとされますが)。

 

租税法規不遡及の原則

課税するには法律の定めが必要ならば、法律ができる前の行為には適用されないはずです。ただし、罪刑法定主義とは異なり、合理性がある限りで遡及適用も許されるとされます。

所得税の分野で、特措法改正による長期譲渡所得損益通算不可とする改正を年度の初めに遡って適用した事例の判例があります。

最高裁は、合理的制約は許容されることを前提に、 駆け込み防止という合理的必要があり、所得税が期間税であること(既に発生した納税義務の内容を変更ではない)、報道等により予測可能だった等から、遡及適用を是認しました。ぎりぎりの例ではないでしょうか。

 

【租税公平主義】

憲法14条1項の平等原則から導かれます。「担税力」(納税能力)に即した課税を要請します。

所得税法における所得分類、超過累進課税がその最たる例です。
所得税では所得の種類(10種類)によって課税の仕方が違います。所得の種類によって担税力が違うということを根拠にしています。
超過累進課税制度も、勿論担税力に応じた課税の制度です。

  

【租税法律主義と租税公平主義の相克、租税回避行為】

租税法律主義と租税公平主義は場合によっては相克します。

法律の不備は立法で解決するか、公平を期すために租税法を柔軟に解釈して解決すべきかの問題です。
前者では文理解釈が要請されますし、後者だと目的論的解釈、拡張解釈が要請されます。ほかにも、通達への対応、規定がない場合の否認を許すか、についても対立します。

租税法律主義が憲法にはっきり定められている大事な原則である以上は、基本的には租税法律主義が優先します。

 

租税法律主義と租税公平主義の相剋の典型的な場面として、租税回避行為への対応があります。

節税とは、租税法規が予定した法形式を用いることです。軽減特例の利用などです。
脱税とは、課税要件充足事実そのものを秘匿することです。
租税回避行為は、節税でも脱税でもありません。

①通常のものと考えられている取引形式とは異なる取引形式を選択し

②通常の取引形式を選択した場合と同一またはほぼ同一の経済的効果を達成し、

③租税上の負担を軽減または排除することです。

税負担軽減目的は前提ですが、脱税という違法行為ではないのですね。

 

昔の典型的な例は、土地売買にかかる譲渡所得税負担軽減を目的として、お金が欲しい人が土地を欲しい人に対して極めて長期の地上権設定し、土地を欲しい人がお金を欲しい人に対して弁済期を地上権の終期とする時価相当額の金銭の貸付を行う。地代と利子は同額、一方的更新可能の例です。現在では通用しませんが。

 

様々な租税回避行為が、「節税スキーム」と称されて次々に考えられています。

法律を変えるのは大変、法律の抜け道を考えるのは簡単、ということで、いたちごっこになります。
そこで、法律の改正をしないで、当事者が用いた法形式を租税法上は無視し、通常用いられる法形式に対応する課税要件が充足されたものとして扱うこと(税法上の否認)が許されるかが問題となります。租税回避行為の否認の問題です。

 

租税法律主義の下では、法律の個別否認規定によらない否認は認められません。

租税公平主義からすれば似たようなことをしている者同士は同じ課税をするべきということになりますが、租税法律主義が優先します。

租税法律主義の下においては当事者の選択した法形式を通常用いられる法形式に引き直し、それに対応する課税要件が充足されたものとして取り扱う権限が課税庁には認められていないのですね。

 

現在では、個別否認規定によらない否認は認められないことを前提として、私法上の法形式を租税法上もそのまま容認するかどうかが争われる傾向のようです(事実認定による否認)。

 

上の例では、地上権設定を売買として課税するというのではなく、私法上の契約が売買と認定される、売買と認定される以上は譲渡所得課税するという理屈です。法律解釈論(この場合も当該規定が適用されるか)ではなく事実認定(この場合はどんな契約が成立したか)で解決するイメージです。

 

租税の争いなのに、民法あるいは商法等の私法上どのような契約が成立したかの解釈で決着がつけられることになります。
勿論、簡単に認められません。私法上、法形式選択の自由が認められるのでどんな形式を遣おうが自由ですから。

 

次回は租税とは、租税法とは、といったお話です。そのあと所得税法のお話に入ろうと思っています。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


自己破産、個人再生の債権者に漏れがあった場合 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の借金問題コラムでは、自己破産個人再生の際の債権者一覧表に一部債権者の漏れがあった場合についてお話しします。

 

あってはならないことですが、稀に起きることがあります。

債権者数が多い場合、しばらく支払えていない場合、保証債務や個人間の債務など請求がまだ来ていない債務がある場合、代位弁済・債権譲渡が続き債権者を把握できていない場合などが考えられます。

 

債権者の督促状が来ていない、しばらく口座引き落としもない、という場合には、依頼者が弁護士に伝えない限り、弁護士が把握できないですね。

勿論、弁護士事務所等の単純なミスで債権者一覧表にある債権者が漏れる可能性もあります(あってはいけないことですが)。

 
自己破産個人再生手続の途中で債権者の漏れが判明した場合はどうするのでしょうか。

 

その場合には、債権者一覧表を補正して債権者を追加すればいいです。

なお、手続の途中で督促状等債権者からの連絡が来た場合は、債権者一覧表にその債権者が記載されていない可能性が高いので、弁護士に確認をしてください。

 

債権者一覧表に記載漏れがあったまま自己破産個人再生手続が終わった場合はどうなるのでしょうか。

 

自己破産の場合、非免責債権を定める破産法253条1項6号に、

「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)」

と定められています。

 

非免責債権とは、破産免責の効果が及ばず破産者がその弁済責任を免れない債権です(ということは債権者が法的に請求を継続することができます)。

「債権者名簿」とは、債権者一覧表を指すと思ってください。債権者一覧表に知りながら債権者を記載しなかった場合には非免責債権として免責対象外になってしまうのです。

 

裁判所は債権者一覧表の記載に基づき債権者に通知を行います。記載漏れがあると、当該債権者は免責についての意見申述をする機会を奪われるなどの不利益を被ることから、非免責債権として債権者を保護する趣旨と説明されます。そのため、債権者が破産開始決定のあった事実を知っている場合には債権者を保護する必要がないので非免責債権になりません。

 

「知りながら」とありますが、記載漏れ自体が破産者の過失による場合であっても非免責債権になるとされています。怖いですね。
破産者が無過失で記載を漏らした場合にはその債権者に免責の効果が及ぶということになります。

 

確たる判例がありませんが、当たった下級審裁判例でも、

「債権者名簿に記載されなかったことが破産者の責めに帰することのできない事由による場合にまで非免責債権とすることも相当ではない。そうすると、債権者名簿に記載されなかった債権について、債権の成立については了知していた破産者が、債権者名簿作成時に債権の存在を認識しながらこれに記載しなかった場合には免責されないことは当然であるが、債権者名簿作成時には債権の存在を失念したことにより記載しなかった場合、それについて過失の認められるときには免責されない一方、それについて過失の認められないときには免責されると解するのが相当である」

「破産者が、債権の存在を知って債権者名簿に記載しなかった場合のみならず、記載しなかったことが過失に基づく場合にも免責されないと解すべきである。」

などとされています。

 

過失がない場合というのは、長年請求も来ておらず破産者が債権者であるとの認識がなかったなど、破産者がその債権者を記載をしなかったとしてもやむを得ないケースに限られるでしょう。

制度趣旨からは、免責の及ぶ場合を拡げる方向で解釈してもいいように思います(債権者が手続関与をしても免責結果は変わらないと思われる場合など)。

 

しかし、裁判例を見ると免責の効果が及ぶのは例外的な取り扱いのようです。記載漏れがあると基本的には免責の効果が及ばないと覚悟をした方がいいですね。

 

記載漏れがあった債権者から請求があった場合には、とりあえず破産免責決定書の写しなどで破産免責を受けたことを説明することになります。

それに対する対応は債権者が考えることになります。非免責債権かどうかというのは債権者が主張すべきことですからね。

 

債権者が金融機関の場合は、破産開始決定通知、免責決定通知を送って破産免責を得たことを説明すると、免責処理をしてくれる、すなわち請求をしないケースが多いと言われます。実際、当職もOKを貰ったことがあります。ただ、ケースバイケースの判断なのでしょう。

 

自己破産の場合は、債権者の記載漏れがないかよくよく確認しないといけないですね。

 

なお、破産者が主債務者である場合の保証人、あるいは保証債務者である他の保証人の求償権については、債権者一覧表に記載がない場合にも免責の効果が及ぶのか議論があるようです。広島では保証人や他の保証人を債権者一覧表への記載を指導されております。

 

続いて、個人再生の場合に認可決定後に債権者漏れが発覚したときはどうでしょうか。

こちらは割合傷が浅いです。認可された再生計画の再生債権の弁済率に応じて漏れていた債務を弁済するということになります。
ただし計画に基づくと期限が来ている弁済分は一括弁済となります。

こちらもやはり債権者漏れは怖いですね。

 

債務整理(任意整理民事再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


相続人がわからない、知らない人の場合 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の相続問題コラムは、相続人がわからない場合はどうしたらいいのかのお話です。

 

相続人がわからないと言っても、いろいろなケースがあります。

 

勿論、相続人が誰かはすぐわかるケースがほとんどです。
しかし、稀に、戸籍を取ってみたら前婚時のお子さんがいたというような話も聞きます。

どうせ銀行等の相続手続において被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍を用意しないといけません。
早めにとって一応の確認をする方がいいでしょう。

 

数次相続(父、母など相続が続いておりまとめて相続手続が必要な場合。亡くなった順番により相続人が変わり得ます)
代襲相続(推定相続人が被相続人よりも先に亡くなっている場合)
養子縁組
相続放棄
などにより法律上誰を相続人として扱っていいかわかりにくい場合も、資料さえ揃えることができれば整理はできます。
複雑な場合には戸籍を持って(できれば簡単でも相続関係図をお持ちいただいた方がいいですが)、弁護士に相談された方がいいでしょう。
ただ、戸籍を取ること自体が面倒なので、相続人調査から弁護士に依頼してもいいかもしれません。

 

戸籍上相続人の存在が確認できたとしても、まったく交流のない人で連絡先もわからない、あるいは行方不明で生死もわからないというケースがあります。

 

遺産分割協議は相続人全員の同意がなければ成立しません。
遺産分割調停、審判においても相続人全員が当事者になることが必要です。

 

交流もなく連絡先もわからないというケースでは、戸籍の附票を調べて住所を確認し、お手紙を出して交渉を始めます。

 

戸籍を調べてみると、相続人になるはずであった人が既に亡くなっているケースもあります。
相続人より先に亡くなっていた場合には、上述の代襲相続です。
相続人の後に亡くなっていた場合は、上述の数次相続ですね。
戸籍により推定相続人を調べて連絡をさせてもらいます。


稀に、皆さんが相続放棄をして誰も相続人がいないということもあります。
そうであれば、理屈上、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てて、相続財産管理人を相手に交渉、調停等をするしかありません。
その場合、基本的には法定相続分に応じたあるいは準じた解決しかできないでしょう。融通は利きません。

 

ところで、皆が皆住民登録をきちんとしているわけではありません。
調べた住所にお手紙が届かない場合もあります。
その場合には、行方不明として扱うほかないですね(勿論、住所にお手紙が届かないというだけではなく現地調査等によりそこに住んでいないという疎明も必要になるケースが多いです)。
家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てをして、不在者財産管理人を相手に交渉、調停等をするしかありません。
この場合も、基本的には法定相続分に応じたあるいは準じた解決しかできないでしょう。融通は利きません。

 

生死不明の場合もあります。
前婚のお子様が住民登録をかなり前から更新していない、ご家族に確認しても行方不明と言われた事例を実際に経験したことがあります。

 

その場合には、失踪宣告の話になります。
家庭裁判所から失踪宣告を取得し(ご家族のご了解を得た上で事実上当方により手続をするほかありません)、ご家族を代襲相続人として遺産分割協議、調停等を進めることになります。

失踪宣告は、通常使う普通失踪の場合は、7年間不在者の生死が明らかではないときに認められます。
失踪宣告により、失踪期間7年間)の満了時に死亡されたものとみなされます。

 

ただ、後に、失踪者が生存すること、または死亡とみなされた時期と異なった時に死亡したことが証明された場合には、失踪宣告が取り消されます。
そういうことがないと見込まれるケースでの利用になるでしょう。

  

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


破産手続における破産管財人 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

今回の借金問題コラムは、破産手続に登場する破産管財人のお話です。

破産管財人をご存知でしょうか。


当職も破産管財人を多数経験しておりますが、一般的には馴染みがない言葉かもしれません。

 

破産管財人が就任する場合はどのような時でしょうか】

 

破産管財人が選任される事件を管財事件と呼びます。

破産法上、破産手続のために破産管財人が選任されることが原則です。

法人が破産をした場合には、原則どおり、破産管財人が裁判所によって選任されます。
法人破産の場合は、管財事件となるということです。

 

これに対して、個人が破産をする場合には、同時廃止事件を除いて、破産管財人が選任されます。
建前と異なり、個人の自己破産の場合、多くは破産管財人が選任されないまま、同時廃止事件として終了します。

同時廃止事件というのは、財産があまりなく(各裁判所によって基準があります)、破産手続費用を支弁できないと認められる場合に、破産開始決定と同時に破産手続が廃止される手続です。
だから同時廃止と呼ばれます。

財産の基準は、同時廃止基準あるいは振り分け基準が各裁判所で決められており、それに沿って判断されます。
広島地裁本庁ですと、現在、現預金50万円、その他財産は項目毎に各20万円が基準となっています。

ただし、財産がなくとも、広島地裁本庁では5年以内に会社を経営したり事業を行っていた場合や、免責不許可事由がありその程度が重大な場合と思われる場合
(免責調査型の管財事件と呼ばれます)にも、破産管財人が選任されます。

 

破産管財人就任のタイミングは】

 

破産管財人が就任するのは破産開始決定のタイミングです。

自己破産を申し立てた場合は、裁判所からの補正連絡に対応して、指示された予納金を納めたタイミングか、あるいは債務者審尋にて破産管財人候補者と会ったタイミングですね。

 

破産管財人は誰が就任するのか】

 

裁判所が、弁護士から選任します。
自己破産申立代理人ではない客観的な弁護士が選ばれます。
法人の自己破産と個人の自己破産とを同時に申し立てる場合には、同じ弁護士が就任します。
割合大規模な破産の場合には、管財人代理の弁護士も選任されることがあります。

 

破産管財人の仕事とは】

 

様々な仕事がありますが、大まかに言えば、調査、財産の管理処分、債権調査・配当(なお、配当が全く見込まれないと債権調査はされません)です。

 

まず、一番大きい仕事は財産の管理処分ですね。

破産開始決定後の破産者の財産(個人の場合には財団に組み入れる財産に限られます)の管理処分権は破産管財人に移ります。
個人の場合には、自由財産拡張(財団に組み入れない財産を決める手続)に対する意見も出します。


財産を換価して配当原資を作るということになります。

当職の経験でもいろいろなものを換価しました。

預貯金、株式、保険、ゴルフ会員権、保証金、不動産、車、機械工具類、在庫商品等々、様々なものを処分します。
 

工場内の機械工具一式等、場合によっては入札方式で売却をします(引取業者に声をかければ現地に来てくれます)。

不動産は、基本的には業者さんに仲介して売却しますが、流通性が乏しい不動産や賃借人、借地人がいる不動産では、近隣の方や賃借人・借地人にお声がけをしたこともあります。

特に苦労したのは農地の処分ですね。農地は普通には処分できません、農業委員会などに問い合わせる、あるいは近隣の農家さんに声をかけるなどしないといけません。
また、有害廃棄物がある場合は処理してからではないと売却できません、たまたま処分工場が閉鎖になっている時期に当たり一時保管場所の確保等苦労したことがあります。
抵当権者や租税公課の差押権者との交渉も骨が折れる場合があります。
売却する場合には、現状有姿売買、境界確認義務免除、瑕疵担保責任免除の形で購入してもらいます。
その分、ある程度安価になることは止むを得ないかもしれません。
 

 

なお、財産の管理処分に関連して、破産者の訴訟を引き継ぐこともありますし、換価回収のために訴訟を提起することもあります(敷金返還の訴訟を提起したこともあります)。

 

次は調査です。

破産管財人には調査権限があり、破産者には回答協力義務があります。

財産調査、負債調査、個人破産の場合には免責調査もします。
破産者宛の郵便物は破産管財人に転送され、開封してチェックすることになっております。

個人破産の免責調査については、破産管財人から免責に関する意見書(免責不許可事由がない、免責不許可事由があるが裁量免責相当である、免責不許可が相当である)が裁判所に提出され、ほぼそのとおりの結論が出ます。

 

調査に関連して、否認権というものがあります。
破産管財人には、破産法に定められた否認対象行為がある場合、同法に定められた要件で、破産者が行った行為を否認し(法的効果を覆す)、散逸した財産を取り戻す権限があります。


よくあるのが、受任通知後あるいは破産直前の偏頗弁済(不公平な債務の弁済)や贈与などの無償行為ですね。
破産直前の相続、離婚に伴う財産分与慰謝料支払、不動産や車の売却もよくよく吟味されます。営業譲渡、会社分割も否認の対象となり得ます。


通常、まずは交渉による解決を図りますが、解決できない場合には破産裁判所へ否認請求を申し立てる、あるいは通常裁判所へ否認の訴えを提起するという流れになります。

和解的な解決ができるケースが多いのですが、当職が申し立てた否認請求が破産裁判所で認められた後に通常裁判所に異議訴訟を提起され、それが控訴審まで至って解決にかなり時間がかかったケースも経験しています。

 

なお、法人破産の場合、破産管財人が税務申告をすることもあります。
従前の税理士さんに頼める場合は頼むのですが、資料が散逸している、関係が悪くなっている、あるいは税理士さんにお願いする費用が出せないような場合には、破産管財人自ら申告作業をします。
当職も何件か自分で申告をしました。そのため、法人破産の場合には、会計書類の保全、引継ぎも大事になってきます。

 

勿論、破産管財人は、上述に限らず、開始決定から手続廃止・終結まで、破産手続の隅々に関与します。

破産管財人の経験がないと破産のことは完全にはわからないと言ってもいいかもしれません。
特にどのような行為が問題となりそれがどの程度突っ込まれるかですね。

申立代理人を選ばれるときにも、破産管財人の経験が豊富な弁護士が望ましいですね。

 

今回は破産管財人についてご紹介をしました。
破産管財人に接することがございましたら、ぜひご協力のほどよろしくお願いします。

 

債務整理(任意整理民事再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


法人の自己破産の相談ポイント [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

法人の自己破産もお手伝いすることも割合多いです。法人の破産管財人もコンスタントに受けております。

 

法人の自己破産は、個人の自己破産と異なり、契約まで、あるいは受任通知までに、いろいろな整理をしていかないといけません。

時間があまりない中でご依頼者様にも頑張っていただかなければなりません。

 

そこで、法人の自己破産相談についてのポイントなどをお話します。

 

【方針として自己破産を選ぶかどうかの問題】

法人の自己破産をご相談に来られる理由は、

1 資金面で、今月あるいは来月の支払ができない。

2 業績面で、業績回復が見込まれず長期的に債務弁済の見込みが立たない。

3 後継者面で、後継者もおらず業績も不振が続いているためリセットしたい。

が多いでしょうか。

 

1の場合

慢性的な資金ショートか短期的な資金ショートかの見極めが大事ですね。

銀行の借入れの条件変更(リスケ)+協力仕入先の条件変更で対応できるのであれば、敢えて今自己破産を選択する必要はありません。
向こう数か月程度の資金ショートだけ乗り越えればいいですよね。

この点、借り換え資金が出ずに資金ショートをする会社さんが多いです。その際にはリスケも検討します。借換資金が借りられなくても返済を止めれば資金はその分余ります(最近は銀行からはリスケに当たって事業計画あるいは再建計画の提出を要請されることが多いです)。

これに対して、資金ショートが慢性的あるいは慢性的と予想される場合は、次の2の話になります。

 

2の場合

会社再建のイメージが掴めるかが大事です。

①リスケの上で一定額の弁済資金が捻出できる見込があり、②業績回復の上で多額の債務を弁済していける青写真が描けるか、ですね。この点の見極めが大事です。

現状維持だけのためのリスケは単なる時間稼ぎになってしまいます。仮に業績回復が見込まれないというのであれば、自己破産の資金手当てができるうちに自己破産をされる方が関係者に対する迷惑も最小限に抑えられることになるでしょう。

この点は、社長様の意欲、ビジョンに負うことも大です。経営決断の最たるものですね。

勿論、自己破産の相談に来られても、打ち合わせの中で、事業継続を選択する社長さんもいらっしゃいます。
その場合には、銀行のリスケと個人債務の任意整理により資金繰りを落ち着かせて後は業績改善に頑張ってもらうことになります。再建計画策定や銀行等の交渉をお手伝いすることになります。
一方で、業績低迷が続く中、決断ができずに債務だけを増やしていっている例もあり(多くの場合、営業縮小に走りより身動きができなくなります。)、その場合には自己破産をお勧めせざるを得ません。法人破産の破産管財人をしているとそのような例が多いですね。もっと早く整理すればご苦労は幾分軽減されたのにと思うことがあります。

 

3の場合

基本的には自己破産をするべきということになるでしょう。多くは役員報酬も満足に取れていないケースです。
出口が見えない以上、経営を続けることをお勧めできません。
社長様の自己破産後の生活再建の方がより大事になります。

 

【法人自己破産相談のタイミングの問題】

法人の自己破産のご相談は、できるだけ早くされた方がいいです。

法人の自己破産では様々な準備をしなければなりません。弁護士に相談をしながら段取りを組んで準備を進めてください。

弁護士関与の下で、できるだけ混乱を生じさせないように、かつ後の自己破産手続で問題になる点が発生しないようにしたいところです。

 

通常は、事業廃止と同時に弁護士か債権者等へ受任通知を出します。

 

そのため、事業廃止のタイミングを検討しないといけません。タイミングを考えるにあたっては、

①資金繰り状況(自己破産の費用を支弁できるタイミングがベストです)

②従業員の状況(解雇予告をしてあるいは解雇予告手当を用意して解雇をすることになります)

③資産処分の状況(費用面で資産を処分して自己破産費用を支弁する場合など資産整理を先行する場合もあります)

などを考えるでしょうか。

 

タイミングが決まれば、事業廃止日をターゲットにして会社の整理について段取りを汲みます。

従業員解雇の段取り、賃借物件の明渡し等の段取り、売掛金の振込先口座の変更などの売掛金回収の段取り、取り立てに対する対応の段取り、売掛金リスト、買掛金リストの作成の段取り、資産保全の段取り、現金化すべき資産の売却の段取り、自己破産申立てに必要な書類等の保全の段取り、等々のさまざまな段取りを組まなければいけません。

 

個人保証をしている代表者の自己破産の段取りも組まないといけませんね。

 

勿論、急に事業廃止をしないといけないケースもあります。その場合には事業廃止後に段取りするしかありません。事業廃止のタイミングで受任通知を出すと、取引先からたくさんのお電話をいただきます。それの対応も弁護士の仕事になります。

 

【法人破産の費用捻出の問題】

法人の自己破産の費用捻出も気になるところです。

 

法人の自己破産において裁判所に納める予納金は100万円が原則です(場合によっては減額してもらえます、裁判所と交渉することになります)。

それに加えて、ケースバイケースの金額になりますが、実費と弁護士費用が必要ですね。できれば200万円は資金の準備がほしいところです。

 

通常はそれらを用意できるタイミングで事業廃止をします。

勿論、今後の売掛金の回収も見込むとそれらの費消が捻出できるタイミングでも事業廃止することはあります。
受任通知後に売掛金回収を図るということですね。

現金化できる資産がある場合には、それらを現金化して費用を捻出するということもやります。
勿論、弁護士の関与のもとに処分行為をすることが大事です。弁護士の関与のない処分行為は破産手続で問題視される可能性が高くなります。

 

なお、代表者さんが個人保証をすることがほとんどですので、同時に代表者さんの自己破産も必要となるケースがほとんどです。
代表者さんの自己破産管財事件になりますので、予納金が必要になります。

弁護士費用は弁護士との契約次第で法人のみ費用をもらうということができるのですが、裁判所に納める個人の破産予納金は法人のお金から出すわけにはいきません。
20~30万円程度必要と思います。

仮に用意できない場合には、捻出方法を弁護士と一緒に考えます(法人である程度お金を詰むことができるケースでは、裁判所と交渉して個人の予納金をできるだけ小さくしてもらうよう働きかけます)。

 

【相談、依頼する弁護士の問題】

法人の自己破産は、様々なことを検討準備しないといけない故に、弁護士の力量が破産手続進行のスムーズさ等に反映されてしまいます。

 

早めにご相談されることは勿論、どうせなら、きちんと疑問点を解消してくれ、段取りを明確に示してくれる弁護士に依頼されるべきでしょう。

できれば、法人破産の破産管財人経験が豊富な弁護士の方がいいです。
法人破産を破産管財人の目から見たことがないと法人破産の本当の理解は困難ですから。

 

債務整理(任意整理民事再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


相続不動産を独占されている場合 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 
今回の相続問題コラムは、相続財産を一人の共同相続人に独占して使用されているケースの解説です。

 

相続が発生し遺産分割協議は終わっていない状態で、1人の相続人により相続不動産を勝手に使われているという相談をよく承ります。

 

相続が発生すると、遺産に属する不動産は、相続人間の遺産共有状態になります。遺産分割協議、遺産分割調停、遺産分割審判で確定的に遺産分割が決まるまでその状態が続きます。

遺言がある場合は別ですが、それでも遺留分減殺請求を行った場合にも共有状態が作出されることがありますね。

他の相続人からしてみると、単独で遺産である不動産を使用収益していることが納得できないことになります。

 

典型的な事例は、

賃貸不動産の管理を相続人の1人が独占し賃料も受け取って独占している場合、

あるいは

相続人の相続不動産に1人の相続人が住み続けている場合、

ですね

 

この2点についてお話ししようと思います。

 

【賃貸不動産の管理を相続人の1人が独占し賃料も受け取って独占している場合】

 

遺産から生じる賃料は、法律上、遺産の果実との扱いを受けます。遺産の管理や利用等によって生じる収益ですね。

 

遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得することになっています(最判H17.9.8)。

 

確定的に取得するのですから、後に遺産分割がなされても影響がありません。相続分というのは遺言がない限りは法定相続分と思っていただいて構わないでしょう。

 

賃料を独占している相続人に対しては、(賃料額-経費)×相続分を請求できることになります。経費は遺産管理費用と呼ばれますが、どこまでが算入されるか自体争いになることが多いでしょう(経験上、その相続人が払った所得税が難しいですね。他の所得もあるわけですから)。

 

遺産の果実の分配は、理屈上、遺産分割ではありません。

相手方が請求に応じなければ訴訟で解決することになるのが基本です(ただし、調停を先に起こすという調停前置主義の対象にはなります)。訴訟する理屈は、不当利得返還請求あるいは不法行為に基づく損害賠償請求になります。

 

ただし、それでは面倒ですね。遺産分割協議においては勿論、相続人全員の同意があれば調停等の遺産分割手続で解決することもできます。

 

遺産分割の段階では、預かり敷金・保証金の扱いも忘れてはいけません。物件を引き継ぐ=賃貸借契約を引き継ぐ=敷金返還債務を引き継ぐ、相続人との調整が必要ですね。

 

【被相続人の相続不動産に1人の相続人が住み続けている場合】

 

明渡請求ができるかどうかが気になるでしょう。

 

まず、使用貸借(無償での貸借)契約の成立が問題となります。成立したと認められるケースであれば、当然、使用貸借の期間満了まで明け渡しを請求することはできません。

 

判例(最判H8.12.17で、相続前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と同居の相続人間で、被相続人が死亡した後も遺産分割により上記建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き同居相続人に無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるとされています。

 

判例のようなケースだと原則遺産分割までには明渡請求が認められないことになります。
使用貸借が認められるかどうかはケースバイケースの判断なのでしょう。当然認められるわけではありません。

 

使用貸借契約の成立が認められない場合でも、理屈上、無条件に明渡請求は認められません。

 

居住している相続人にも共有持分がありますね。民法上、共有者はその持ち分に応じて共有物の全部を使用することができます。
共有物の管理行為は持ち分の過半数で決定されるので、過半数持分の相続人による明渡請求は認められそうだとは思いますが、裁判例では認められていません。
共同相続人の間の占有の変更は管理行為ではなく給油者全員の同意が必要な変更行為(民法251条)と考えられているようです。

 

そうであれば、明渡請求ができないので(勿論遺産分割等で所有関係が確定する前のことです)、他の相続人ができることは金銭請求の途しかないということになります。

 

使用貸借が認められるケースでなければ居住相続人は他の相続人の持ち分について無権原占有者です。
共有不動産を使用=居住することはできるが、無権原で使用する部分についてはその利益を賠償・返還するべきとういうことになります。


具体的には、不動産を単独で占有する共有者に対しては、不当利得返還請求権あるいは不法行為に基づく損害賠償請求権として、賃料相当額×相続分を請求することができます。
勿論、賃料相当額がいくらかということはなかなか難しいのですが・・・。


なお、居住相続人が遺産の管理費用(固定資産税等)を支払っている場合には、賃料料相当額からそれを控除して請求する、あるいは控除するよう反論されることになります。

 

先にも書きましたが、遺産収益に関する訴訟は、調停前置です。まずは家事調停を申し立てることが原則です。
ただ、既に揉めているケースがほとんどでしょうから(遺産分割の話がまとまらないから単独占有の問題が顕在化します)、話し合いの余地がないとしていきなり訴訟をすることも認められるケースもありますし、実際に裁判所から何も言われなかったこともあります。

 

遺産分割協議、調停・審判は出来るだけ早く進めるべきです。それと並行して、遺産の果実の問題等が出てくるというお話でした。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


自己破産、個人再生と給与明細 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理のうち、自己破産個人再生の場合にはご相談時に給与明細をお持ちいただいた方がいいかもしれません。

 

自己破産民事再生の申立準備のためには給与明細をお持ちいただくのですが(給与明細は必要書類になります)、その際に、依頼者様がご認識されていない事実が判明してしまうことが時々あります。給与明細には自己破産個人再生の準備にあたって重要な情報が載っている場合があるのです。

 

特に、給与明細の控除(給与天引き)の欄の問題です。裁判所もかならずチェックをしているところです。

 

まず、債務、債権者の面です。

 

自己破産個人再生では、債権者を一部外して手続をすることはできない原則です。
債権者はすべからく債権者として扱わないといけません。

 

給与明細の控除欄を見ると、稀ではありますが、勤務先からの借入金や労働組合・共済組合からの借入金があることが漏れていたことが判明する場合があります。

 勿論、勤務先からの借入れや組合からの借入金があると、勤務先等を債権者として扱わないといけません。

 

そうすると、自己破産個人再生を申し立てるということが勤務先等に判明してしまいますし、何よりも弁護士からの受任通知や裁判所からの通知が届いてしまいます。

理屈上、そのことにより勤務先が従業員を解雇することは難しいですし、その事実をもって解雇された例も経験がありません。ただ、困ってしまうのは当然ですね。

場合によっては、後々偏頗弁済として問題になる行為であることを承知の上で、勤務先に対する返済を手続に先行して行うケースもあるでしょう(勿論、弁護士が推奨できる行為ではありませんが)。

 

なお、共済組合等からの借入金など保証会社が付いているケースでは、割とすんなり受け入れられる傾向があります。
ただし、通常、破産開始決定あるいは個人再生開始決定まで給与天引きは継続されてしまいます、開始決定時に保証会社による代位弁済がなされ給与天引きがなくなります。
これを偏頗弁済として突っ込まれるケースもなくはありません。管財事件だと否認の対象になり得ますから(当職も破産管財人として否認し勤務先に返還してもらったことがあります)。

 

問題は勤務先等に「債務」があるかどうかです。
勤務先での事故や何かの手当の返戻があるなどの事情で、「弁償金」、「返納金」、あるいはただ単に「その他」などの名目で天引きされていることがあります。
運送会社などだと事故負担金が天引きされていることもあります。
勤務先からの借入金は忘れなくても、それら支払債務を「債務」だと認識されていないケースもあります。
借入金でなくとも勤務先に対して債務を負っていれば勤務先を債権者として扱わないといけないことにご注意ください。

 

次に財産の面です。

 

控除の欄に、団体保険や共済保険の給与天引きの記載があることがあります。けっこう、忘れてしまうケースがあります。
自己破産個人再生では、保険契約がある場合、保険証券と解約返戻金証明書(あるいは解約返戻金がない、ある場合は金額がわかる資料)が必要書類の中にあります。
団体保険は書類が残っていないことが多く、慌てて問い合わせや再発行をしてもらうことがあります。事前に確認しておきたいところです。

 

また、〇〇金、〇〇積立、〇〇会等の項目で給与天引きがある場合もありますね。

資産性の有無(解約したらお金が返ってくるのか)、資産性がある場合には残高がわかる資料の報告を求められます。

 

組合費や親睦会であれば資産性はないという説明ですんなり通るのですが、旅行積立等「積立」は説明に困りますね。
旅行積立は会費みたいなものでお金は帰って来ないということも多いのではないかと思いますが年金等他の積立は通常資産性があるのだろうと思いますから資料あるいは説明が必要になりますね。

 

財形預金、社内預金の天引きがある場合には、それらは勿論資産性があるものでしょう。残高がわかる資料が必要ですね。

 

なお、給与天引きの控除欄ではないですが、保険料の所得控除の欄も要チェックです。
控除があるのに保険契約の資料がないこと、あるいは金額的に保険契約が一部漏れていることがわかるケースもあります。勿論、被扶養者契約の保険料もあるかもしれませんが。

 

このように、自己破産個人再生の検討・準備をする際には、給与明細は、その控除欄(給与天引きの欄)を中心に早めにチェックをしておかないといけない書類です。

 

債務整理(任意整理民事再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


租税法とは [税法の話1]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

広島大学大学院法務研究科にて平成27年から租税法の講義を担当しております。
客員准教授と固い肩書ですが、司法試験を目指す生徒さん相手にざっくばらんなお話をさせていただいております。

 

租税法は本当にわかりにくいです。

 

租税法は、申告納税制度を採用しています(制度上は確定申告をしないでいい給与所得者は例外扱いです。)。
したがって、租税法は国民の申告マニュアルの機能を有しているはずです。

本来は誰が見てもわかるようにわかりやすくないといけないのですね。

租税法は国民の予想可能性、法的安定性を保障しないといけないのです。

 

しかし、わが国の租税法は特にわかりにくいと言われています。

所得税法、法人税法、祖相続税法等の法律自体、専門家が読まないとわからないものですし、租税特別措置法等の特別法が絡んでくるともう厳しいですね。
正直、私も把握しきれません。

 

なお、租税法がわかりにくいこともあって、通達というものがあります。租税の世界は通達行政の代表選手です。

でも、よく誤解があるのですが、通達は行政機関内部の連絡等文書であって租税法ではありません(税理士さんとよくお会いしますが、税理士試験は通達を勉強するもので法律を勉強するものではないと自嘲気味におっしゃいます)。

 

わかりにくい租税法ですが、経営や生活に直結する世界です。少しでもご紹介していこうと思います。
どれだけ書けるかわかりませんが、授業の進行に合わせて投稿しようかなと思っています。

 

今回は、租税法の世界の大きな特徴2つをお話しします。

 

まず1つ目は租税憲法です。

 

租税法の解釈は、憲法が強く反映されます。
法律なので憲法に則らないといけないのは当然ですが、ボストン茶会事件の「代表なくして課税なし」に代表されるように、近代憲法制定の大きな動機の1つが国王の徴税権を制限するということだったのです。市民が闘争を経て勝ち取ったのが徴税権の制限なのです。

その流れを汲む日本国憲法も、租税には気合が入っており、少ない条文の中で2条も租税関係に費やしています。憲法84条と30条ですね。
国民の財産権を直接侵害する租税については気を遣っているのです。

そのため、租税法は常に憲法に立ち返って解釈されることになります。租税憲法と言われるゆえんです。

 

その憲法も、時には相反する要請を内在します。

 

まず、租税法律主義です。「代表なくして課税なし」です。

国民の代表である議会が制定した法律でなければ租税を課すことはできないということですね。

なんでも法律で明確に決めるということが要請されます。

 一方、法の下の平等を定める憲法14条からは、租税公平主義が導かれます。

法律を柔軟に解釈して公平な課税をすることを要請されます。

 この2つの要請は相剋することがあるのです。租税法の解釈の争いは、この2つの要請が対立する場面でよく起こります。

勿論、基本は、租税法律主義が優先します。憲法にはっきり書かれていますからね。

 

2つ目は、租税法のスタンスです。視点といってもいいかもしれません。

 

民法、商法等、いわゆる私法は、私人-私人間の法律関係を規定しています。

 

一方、刑法、行政法等、いわゆる公法は、国-私人間の法律関係を規定しています。

 

租税法はどうでしょうか。少し特殊です。

税金を賦課する場面では国-私人間の法律関係を規律するものであることは勿論です(租税法律関係)。

しかし、物が人から人へ動いただけでは、税金はかけられません。

例えば、売買には所得税、贈与には贈与税(贈与税は相続税法に規定されています)と、私人間の法律関係でどのような契約が原因で物が動いたかによって税金が違います。
売買なのに贈与税を課税してはいけませんよね。

このように、私人-私人間の法律関係を規定する私法上の法律関係を前提に、国-私人の租税法律関係が構築されるのです。

従って、租税法の解釈(課税関係の分析)についても、第1次的には私法の解釈が必要です。
経済取引事実の発生があり(モノとカネが動いた)、それを私法上の要件事実(モノの所有権移転約束と代金支払約束)に当てはめて法律構成し(売買契約)、当てはめるべき租税法(所得税法)を解釈運用する、ということです。

 

結局、租税法は、(私人-私人)-国の関係が上から見ているイメージでしょうか。

 

租税法のお話にニーズがあるのかどうか不安ですが、これからも投稿していこうと思います。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


債権者に給与口座、年金口座の銀行がある場合の注意点 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。

 

債務整理をしないといけない場合に、給与口座がある、年金受取口座がある銀行が債権者である場合があります。

その場合は注意をしないといけません。
軽々に弁護士に受任通知を送ってもらってはいけません。

 

銀行に債務整理の受任通知を送ると、届いた時点で借り入れについて期限の利益が喪失され(直ちに一括請求されるという意味です)、預金口座は凍結され、口座の預金債権は借入債務と相殺されてしまいます。
 

なお、任意整理のケースでは銀行ローンは手を付けないことが多いです。
自己破産個人再生の場合はそうはいきませんから、銀行に受任通知を送らないといけません。

 

給与口座、年金受取口座を凍結されてしまうと、勿論、預金を引き出すことができません。

一方、給与口座指定を変更しない限り、給与が入金されます(口座凍結がなされても振込入金は入ってしまいます)。年金も同様です。

給与、年金が引き出せないと困りますね。

 

そのため、給与口座、年金受取口座のある銀行が債権者であるときは、受任通知を出す前に、給与口座あるいは年金受取口座を借り入れのない銀行の口座に変更してもらいます。

 

年金口座の変更には時間がかかります。また、給与口座の変更にも大きな企業だと時間がかかることがあります。

 

そのため、相談を受けた時点ですぐに変更をするようアドバイスしております。
銀行が債権者であるかどうかは相談時にわかっていることがほとんどです。
しかし、預金口座とセットのカードローン契約やクレジット契約がある場合に銀行が債権者であることを認識されていないケースがありますのでご注意ください。

 

ただ、中にはメイン銀行の口座しか給与振込口座に指定できない勤務先もあり、その場合は困ります。
その場合はなんとか勤務先に掛け合ってもらいます。

 

残念ながら口座凍結がされた後にその口座に給与、年金が入ってしまった場合にはどうしたらいいのでしょうか。

 

まず、キャッシュカードが使えませんから窓口で引き出しをしないといけません。

かつ、口座凍結されている以上、簡単には引き出せません。

銀行に予め連絡して承諾を得ておく必要があるでしょうし、債務者の方が窓口に行った後に弁護士に確認の連絡が来ることもあります。

 

ただ、給与、年金の場合には、最終的には銀行が引き出しに応じるのが通常です。
広島の地場の金融機関、都市銀行には断られたことがありません。ただし、ネット銀行は経験がありません。

 

勿論、銀行の判断によりますが、受任通知後の入金による預金債権と借入金を相殺することは破産法でいう否認対象行為になるということと、債務者の生活のために必要なお金だということかた応じてくれているものだと思います。

中には、受任通知が届いたら「給与口座が指定されていますが大丈夫ですか。」と確認の電話をしてくれる銀行もあります。

 

なお、口座凍結絡みですと、借入のある銀行に対し保証人となっている方の口座が当該銀行にあるケースも怖いです。

主債務者の受任通知により、同じように保証人の口座が口座凍結されて相殺される恐れがあります。
契約書を探して保証人がいるかどうか確認した上で、正確に弁護士にご報告いただかなければなりません。

 

個人の給料、年金と異なって、法人の売掛金が口座凍結後に入金されたケースだと、引き出しを拒む金融機関があります(基本的には断られるイメージです)。

自己破産開始決定後の破産管財人による引き出しには応じるが、債務者の要請には応じないといった対応です。

債務整理を考える場合に銀行が債権者であるときはこのような注意をしてください。

 

債務整理(任意整理民事再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


<<前のページへ12345678910

100件以降の記事はアーカイブからご覧いただけます。

このページのトップへ