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コラム 9ページ目

相続放棄と廃車など財産処分 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 
今回の相続問題コラムは、相続放棄後の廃車など、相続放棄をした後の処分行為が許される範囲などを説明します。

 

最近は相続放棄の話が多くて恐縮です。偶々変わった相続放棄をお手伝いすることが多かったのでご容赦ください。

 

相続放棄をするのであれば、被相続人の財産を「処分」してはいけません。

相続人の財産の「処分」行為をしたら、単純承認事由となります。
相続債権者が相続放棄の効果を覆すことが可能になってしまいます。
相続放棄の申述手続自体でも家庭裁判所から来る質問内容に処分行為の有無が入っています。

 

相続人の家主等から遺品の整理や引き取りを頼まれるようなこともあるでしょう。
賃貸借の連帯保証人でなければ理屈上は対応する必要はないですが、心情的に断りづらいですね。

 

仮に保管してしまった被相続人の財産は、理屈上、相続財産管理人か新たに相続人が判明したらその相続人に引き渡すまで管理をすることになります。

皆が相続放棄をしても相続管理人が選任されることは稀です。

引き継ぐ先が永遠に現れない場合は、財産的価値がなくなるあるいは誰からも文句を言われることがなくなっただろう頃合いを見計らって処分せざるを得ないと思います。
理屈ではなく現実的な対応ですが。

 

勿論、財産的価値のない遺品の廃棄等は、被相続人の財産の処分としては見られません。
念のため、財産的価値がないことを後で説明できるよう証拠を残しておいた方がいいでしょう。

 

相続人の車を預からざるを得なかった場合はどうしたらいいのでしょうか。

勿論、相続放棄をしたら基本的に預かる必要はないのですが・・・

 

相続人の所有名義車両に価値がない場合には、処分することは単純承認行為にはならないでしょう。
ただ、査定書を出してもらってから処分した方がベターです。

 

車両に価値がある場合には、困ってしまいます。

売却して代金を保管する行為は、保管料・保管の手間を省略して財産を管理する行為として、単純承認行為にはならない可能性はあります。
管理費用を削減することになりますからね。

もっとも、法律上は、相続放棄をした人は相続財産を取得しないため、車両を第三者に売却できませんよね。
売却するために相続財産管理人の選任をしてもらうことも費用がかかり躊躇します。

そうすると価値がなくなるまで保管するという選択肢しかないかもしれません。

 

預かった車がクレジット会社の所有名義である場合は、別の観点からも考える必要があります。
車両が所有権留保物件であった場合、クレジット会社の所有名義になっています。

 

仮にクレジット会社の債権が残っているのであれば、原則として債権者に引き揚げてもらえますね。
債権者に連絡して引き揚げてもらっても問題がないです(清算金が発生する場合には受け取れない旨伝えないといけませんが)。
それができたら楽ですね。


しかし、クレジット会社に車両の所有権を放棄すると言われた場合(価値がないあるいは小さい場合に言われることがあります)には、困ります。

価値のある車だと、理屈上は価値が亡くなるまで保管し価値がないと思われる時点で処分をしないといけません(あるいは相続財産管理人の選任申立てをして処分します)。

 

価値がない車であれば、理屈上、債権者から放棄の書類(名義変更の書類)を貰って廃車できるのでしょう。

 

クレジット会社に債権が残っていなくて、単に名義を変えていない場合(価値がないことが前提です)も、理屈上、債権者から放棄の書類(名義変更の書類)を貰って廃車できるのでしょう。

 

ただ、双方の場合とも、相続放棄をした親族が債権者から放棄の書類(名義変更の書類)を貰えるかが問題とはなります。

 

実際に経験した例は後者のケースでした。
 

相続人の家主に頼まれて車を引き取って保管していたのですが、保管に困り廃車にしようとした、
しかし車検証を見るとクレジット会社が所有者登録されており廃車ができないと言われた、
クレジット会社に問い合わせたところ弁護士から連絡をしてくれと言われた、
ということでした。


当職がクレジット会社と交渉しましたが、最初は相続人ではないから書類は渡せない、相続財産管理人にしか渡せないと断られました。
 

困っている事情と理屈(相続財産管理人は選任されておらず選任される予定はない、車両価値がないことは明白なのでこちらが処分しても問題はない等)を説明して、他の部署からOKを貰い、なんとか名義変更書類を取得することができました。

 

一般的な扱いかどうかはわかりませんが、紹介させていただきます。

 

相続放棄をする以上、下手に被相続人の財産を管理することがないようにすることが一番大事です。
勿論、事情があってやむを得ず管理することになってしまうこともあります。
預かった以上は管理の義務が発生しますので、管理する財産の処分等は慎重に判断してください。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

http://www.nakata-law.com/

 

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租税、租税法とは [税法の話3]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

租税法の総論的なお話は今回で終わりです。

 

【租税とは】

考えると、税金ってなんだろうと思いますよね。学術的に議論されており、かつ判例でも定義されています。

判例の定義は、次のとおりです。

「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付はその形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税」(旭川国民健康保険料事件最大判H18.3.1

 

租税は金銭的給付です。徴兵などは税金ではありません。

 

租税は公益性(公共サービス)のための資金調達です。制裁目的の罰金は租税ではありませんね。

 

課税権に基づき強制的に徴収されるのが租税です(強行性権力性)。国税徴収法により租税債権は大変強い効力を与えられています。租税債権の優先が定められていますし、裁判所を通じなくても差押等の滞納処分ができます(自力執行力)。寄付金は強制ではないから租税ではありません。

租税債権の優先という点で、破産管財人をしていると銀行の根抵当権と租税債権の優先関係をケアしないといけない場面に出くわします。登記と差押えの先後ではなく、登記と法定納期限の先後で決まるのです、滞納租税の法定納期限なんて確認しないとわかりませんから怖いですね。

 

非対価性も租税のメルクマールです。特別の給付に対する反対給付の性質ないということで、国民健康保険や各種手数料は租税ではありません。判例で、国民健康保険は、強制加入、強制徴収等において租税に類似する性質だから憲法84条の趣旨は及ぶとはされていますが。

 

【租税法の機能】

租税法の機能は大きくわけて2つです。

1つ目は、行動規範(マニュアル)です。

戦後、基本的に申告納税制度になりました。納付すべき税額を納税者の申告によって確定させる制度ですね。所得税申告時期の2/163/15は、知り合いの税理士さんは大変です。お祭りみたいなもののようです。

「租税法律主義+申告納税制度=租税民主主義」と言われます。

もっとも、先払いの制度があります。予定納税制度と源泉徴収制度です。前者の意義は、納税者の負担軽減、国庫歳入平準化、所得発生時期と納期を近くするのが理想という理由が挙げられていますが、どうなのでしょう。後者は、申告納税制度を補完する制度で納税者の取引相手に納付義務を課すものです。多くの給与所得者は納税が完結しますね。

 

2つ目は、裁判規範(事後的解決基準)です。

法律ですからね。

 

【私法と税法の関係】

国と納税者の関係は租税法律関係とされています。

私法上の法律関係を前提に租税法律関係が構築されますから、租税法律関係は第1次的には私法により規律されます。売買なら所得税、贈与なら贈与税といったように私法上の契約関係が前提なのですね。民事訴訟法の理論に処分証書の法理というものがあり、裁判では私法上の契約関係の認定に契約書類がかなり重要視されます。

① 経済取引事実の発生      個人A→お金→個人B

② 私法上の要件事実の認定  労働契約、預金契約、棚卸資産と対価 

③ 私法上の法律構成     雇用、消費寄託、売買、贈与、相続

④ 租税実体法の発見     所得税法、相続税法

 

租税法と実体経済にはギャップが存在します。

私経済は不断に変化します(私的自治、法律形式選択の自由)。

租税法は法律の改正が必要です。追いついていけません。

解釈で実体経済をどこまで捕捉できるかという問題が出てきます。

 

【借用概念と固有概念】

条文の解釈の問題です。借用概念は、「売買」「贈与」など租税法に定義がない概念で、本来の法分野である私法と同一意義に解釈されます。課税庁によって自由に解釈されて課税をされてしまうと、租税法律主義の要請である国民の予測可能性、法的安定性を害しますからね。

「住所」の解釈が争われた裁判があります。民法の解釈に沿って、贈与税回避目的があるからといって客観的な生活の実態は消滅するものではない(立法により解決するべき)と国が負けました(最高裁H23.2.18判決)。

 

固有概念は、租税法に定義規定が有る概念です。「同族会社」「みなし配当」などですね。

 

租税法に定義規定がない、かつ私法から借りてきた概念でもない文言というのもあります。

住宅借入金等特別控除にいう「改築」の意味が争われた裁判で、特段の事情がない限り、言葉の通常の用法に従って解釈するとされました。

 

【まとめ】

総論のまとめです。

① 租税法律主義の貫徹

租税憲法の話ですね。

② 私法の重視(借用概念)

租税法律関係は第一義的に私法で規律される。特別な定義が租税法にないならば借用概念として私法と同じ解釈をするべきということですね。

③ 当事者の契約内容重視

租税法律関係は第一義的に私法で規律されます。契約の意味内容も私法で解釈されるべきで、課税庁が勝手に売買を交換等の別の法形式として扱っては駄目ということですね。そこに処分証書の法理という民事訴訟の理論も関わってきます。基本的には、契約書と同じ内容の法的効果の発生し、それに対応した課税しかできないのが原則です。

 

総論的な話が続きましたがこれで終わりです。次回から皆さんになじみの深い所得税法のお話に入っていこうと思います。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

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相続法改正ポイント6 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続法問題コラムとして、2019年日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。
今回が最後になります。

 

【持戻し免除の意思表示の推定】
 

特別受益者の相続分を定める903条の改正です。配偶者の保護のための改正です。


「改正第903条

4 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」

 

「第1項の規定を適用しない旨の意思」とは、持戻し免除の意思表示です。

 

特別受益がある場合、特別受益を遺産の中に回復させて(これを「特別受益の持戻し」といいます。)、特別受益者はそれに基づいて算出した相続分から特別受益額(贈与又は遺贈の価額-財産評価の基準時は相続開始時です。)を差し引くことになります。

 

これには例外があり、被相続人が持戻しの免除の意思表示をしたときは、特別受益は相続財産に算入されません(民法903条3項)。
その意思表示は、遺贈の場合には遺言によりますが、贈与は明示でも黙示でも同時でも事後でもいいとされています。

勿論、持戻し免除の意思表示は遺留分を侵害することができません。相続人に対する贈与は相続開始前10年間にしたものに限りその価額を、遺留分を算定するための財産の価額に算入します(改正民法1044条3項)。

 

上記改正民法903条第4項は、婚姻期間が20年以上の夫婦の間における居住用不動産の遺贈・贈与に関する持戻し免除の意思表示の推定規定です。
死因贈与についても遺贈と同様に考えられるとされています。

 

推定されますので、それを覆す被相続人の意思表示を立証しない限り持戻し免除の意思表示があったと扱われます。推定といっても強い効力を有します。

 

【預貯金債権の仮払い制度】

改正民法第909条の2のお話です。

 

従前、預貯金債権は、遺産分割の対象とならず、各相続人法定相続分に応じて払出しを要求することが可能でした。
対応しない金融機関に対しては訴訟をすれば勝訴できました。

 

平成28年の最高裁決定で、その扱いが変わりました。預貯金債権については、遺産分割までの間は共同相続人全員の準共有状態になるから権利は全員が共同で行使しなければならない、遺産分割の対象となる、としたのです。

これで、預貯金債権も遺産分割調停・審判に乗せることができ(それまでは他の相続人の同意が必要だった)、特別受益の持ち戻しに関連する不公平が解消できます。

一方で、相続債務を弁済する、葬儀代を捻出する等のために相続預金を遣えなくなる不都合が生じます。
遺産分割が完了しないと理屈上金融機関は払出しに応じません。

 

まず、改正家事事件手続法200条3項は、遺産の仮分割の要件を緩和し、一定の要件の下で裁判所が認める預貯金債権の仮払いを認めました。
詳細は省略します。でも、やはり手続の手間暇が負担ですね。

 

そこで、改正民法が、裁判所を経ることなく、預貯金の払戻しができる制度を設けています。
相続開始時の預貯金債権額の3分の1×当該相続人法定相続分が払い戻しの上限です。
さらに法務省令により金融機関ごとの限度額が設定されるようです。

 

【遺産の一部の分割】

遺産の一部を分割できるかについては、現行法では明文規定がありませんでした。解釈上は、当然認められると考えられていましたが。

改正民法907条1項は、一部分割が可能であることを明示しました。

 

それに応じて、一部遺産分割の調停、審判も原則として認められるようになりました(改正民法907条2項)。
特別受益や寄与分の調整の場面等で他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合には許されません。

 

【相続後遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合】

改正民法906条の2です。遺産分割前に遺産がされた場合であっても、共同相続人全員の同意により、遺産分の分割時に遺産として存在するとみなすことができる(1項)。
ただし、共同相続人により遺産が処分されたときは処分をした相続人の合意は必要がない(2項)。

 

1項は、現行法の解釈実務のとおりです。2項が新しいものですね。

これまでは、遺産分割前に相続人が預金を勝手に引き出した等の場合には、遺産分割において当該相続人の同意がない限り、不法行為による損害賠償請求あるいは不当利得返還請求をするほかありませんでした。
改正民法によれば、遺産分割に乗せるのか、損害賠償あるいは不当利得返還の請求をするのかどちらか選べるということになりますね(遺産分割に乗せるには被侵害相続人全員の同意は必要ですが)。

 

なお、相続前の預貯金の無断引き出しについては、従前どおりになります。
相続人の同意により遺産分割対象財産に含めるか、損害賠償請求あるいは不当利得返還請求を行うことになります。
この場合は特別受益(生前に被相続人から贈与された)との反論もあり得ますが。

 

改正相続法のお話はこれでいったん終わりです。

大きな改正で、実務の集積が必要です。

 

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相続法改正ポイント5 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続問題コラムとして、2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

【特別の寄与制度】

相続人の寄与分制度は現行法でもあります。相続人以外の制度ができました。

寄与分は、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした「相続人」のための制度ですね(民法904条の2)。

なお、裁判所は寄与分をなかなか認めません。親族の扶養義務の範囲内を超える行為と認められなければなりません。事実上、そのハードルは高いです。

 

改正民法1050条では、相続人ではない「被相続人の親族」に「特別の寄与」制度を認めました。

相続人と養子縁組をしていない子の配偶者などが該当しますね。

これまでは特別な寄与をした相続人である子の夫(あるいは妻)を妻(あるいは夫)の履行補助者と考えて、相続人の寄与と考えるというような処理がされていました。
改正により、必ずしもそのような理論構成が必要とはいえなくなるわけです。

新しい制度なのでどこまで有効なのかは未知数です。

 

相続人の寄与分制度と特別の寄与制度は建付けが異なります。

特別寄与者は、特別寄与料という金銭支払いを各相続人に各相続分に応じて請求することになります。

特別寄与料は、相続人と合意できない場合、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することになります(審判ですね)。

権利行使期間も定められています。相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、または相続開始の時から1年以内なのでご注意を。

 

なお、特別寄与料の額は、寄与分制度と同様、遺産から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません。そうなると遺言ですべて相続を指定している場合は特別寄与料と請求する余地がありませんね。そういう制度だと割り切るしかないところです。

 

【配偶者居住権】

新しい制度ですね(改正民法1028条~1036条)。

相続人の配偶者は、被相続人所有の自宅不動産に住み続けたいのが通常です。

遺産分割協議にて配偶者が自宅不動産を相続する、あるいは遺言により配偶者が承継するのであれば問題がありません(その場合は遺留分の問題もあります)。

仮に、他の相続人と配偶者の共有の状態になると、場合によっては不動産を処分しないといけなくなる、賃料相当金の支払義務の問題が出てくる、共有物分割請求がなされる等々、配偶者が法的に不安定な立場におかれます。

そこで、改正民法は、配偶者居住権を新たに定め、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間、無償でその配偶者に居住等を認めることにしました。

 

配偶者居住権設定の方法は、

① 遺産分割協議による設定

② 遺言による配偶者居住権の遺贈(死因贈与でもかまわないと解釈されています。)

③ 家庭裁判所の審判

の3つです。

 

配偶者居住権の期間は、原則配偶者の終身の間です。

ただし、遺産分割協議、遺言あるいは家庭裁判所の審判で期間を定めたならばその期間です(改正民法1030条)。

 

改正民法は、配偶者居住権を財産権(相続財産の一部)とみます(改正民法1028条)。
配偶者はその配偶者居住権の財産的価値に相当する金額を相続したものとされます。評価方法は難しいですね。

(年額建物賃料相当額‐配偶者負担の必要費)×年金現価率
あるいは
建物敷地の現在価値‐負担付き所有権の価値、
が提示されていますが、実務の集積を待つほかないでしょう。

 

なお、一定の配偶者居住権の遺贈については、民法903条4項が準用され、持戻しの免除の意思表示があったことが推定されます(1028条3項)。この点は次回お話します。

 

配偶者居住権は登記が対抗要件です。建物所有者には登記手続協力義務があります(改正民法1031条)。

 

配偶者が一部に居住していた場合でも全部の使用収益が認められます。

ただし、権利を譲渡することはできませんし、居住建物の改築・増築・第三者による使用収益は所有者の承諾が必要です(改正民法1032条)。

 

改正民法は、配偶者に第一次的な修繕権を付与し、通常の必要費(固定資産税、通常の修繕費等)を配偶者の負担としています(改正民法1033条、1034条)。
ほかにも修繕と費用に関して細かい規定がありますが割愛しますね。

 

なお、被相続人が配偶者以外の者と共有している建物については配偶者居住権が成立しません。成立を認めてしますと他の共有者の利益を一方的に奪うことになるからです。
ご注意ください。

 

【配偶者短期居住権】

これも新しい制度です(改正民法1037条~1041条)。

遺産分割までの共有状態(遺産共有)の間の配偶者の居住権を保護するものです。

 

判例では、共同相続人の1人が被相続人の許諾を得て同居していた場合には、遺産分割時を終期とした使用貸借契約が被相続人とその相続人との間で成立していたと推認されるとされていました。改正法はそれについて制度化したものですね。

 

配偶者短期居住権は、配偶者に対し、一定期間において居住建物の無償使用権を認める制度です。

存続期間は、配偶者が居住建物の遺産分割協議手続に関与できる通常の場合は、遺産分割時または相続開始から6カ月後のいずれか遅い日です。

配偶者が相続放棄をした、居住建物が遺言で他の相続人に相続させられた場合等、配偶者が遺産分割手続に関与できない場合は、居住建物取得者からの配偶者短期居住権の消滅の申入れがなされてから6カ月後までです。

 

無償使用権なので他の相続人等から賃料相当額の請求ができないことになります。

 

修繕・費用等については、配偶者居住権の規定が準用されています。

 

【内縁配偶者】

内縁配偶者の居住権については改正法で手当てがなされませんでした。

 

これまでどおり、具体的事情によっては、相続人からの明渡し請求を権利濫用で排斥する、あるいは被相続人と内縁配偶者の使用貸借関係を認めるといった保護が与えられます。
不安定な状況におかれたままですね。

きちんと使用貸借契約書を作成しておく、あるいは遺言で対処をするべき問題であることは変わりません。

 

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相続法改正ポイント4 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続問題コラムとして2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

遺言関係のお話をかいつまんでします。

 

【自筆証書遺言の方式緩和】

改正民法968条ですね。こちらはすで施行されています。

 

現行民法では、自筆証書遺言は、前文、日付、氏名を自署しなければいけません。

遺言者の真意を確かめる、偽造・変造を防ぐという趣旨です。

財産がたくさんある場合には面倒ですよね。書き間違いも生じます。

 

改正民法では、相続財産(遺贈も含む)を特定する財産目録については、自署が必要ないとされました。次の条文です。

 

「改正民法第968条

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自署することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自署によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。」

 

パソコンで作ってもいいわけです。

登記事項証明書や預貯金通帳の写しを添付する方法でもいいと説明されています。

ただし、全てのページに署名・押印は要求されています。

なお、加除変更がある場合に遺言者の指示・署名・捺印が必要なのは本文と同じです。

 

【自筆証書遺言の保管制度】

民法改正自体の話ではないのですが、自筆証書遺言保管制度が創設されました。

法務局における遺言者の保管等に関する法律です。

自筆証書遺言は、公正証書遺言と異なって、家庭裁判所での検認手続が必要ですが、同制度を利用した自筆証書遺言は検認手続が不要となります。

検認手続により遺言の有効性が判断されるわけではないのですが(遺言の存在を確認するといった色彩の手続です)、検認手続を経ないと相続手続が進められません。検認手続が必要ないとすると楽なのです。

保管者は、法律の名称からわかるとおり、法務局です。事務を取り扱うのは遺言書保管官という舌を噛みそうな名称の方です。遺言者が自ら、住所地もしくは本籍地、または所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務局ですね)に出頭して、申請をしないといけません。勿論、一度保管してもらった遺言の保管を撤回してもらうこともできます。

新しい制度なので、使ってみないと使い勝手の良さはわからないですね。

 

なお、公正証書遺言と自筆証書遺言は検認手続が必要かどうかだけの違いではありません。

保管制度を利用した自筆証書遺言よりも、やはり公正証書遺言の方が確実です。

形式不備が基本的にはありませんし、遺言の有効性に関する判断においても公証人(法律の専門家出身がほとんどです)の意思確認を経由しているので公正証書遺言の方が確実です。

 

【遺言執行者】

改正民法1007条第2項で、遺言執行者が任務開始時の相続人に対する遺言内容の通知義務が定められました。

 

不明確あるいは争われることもあった、遺言執行者の法的地位を明確にした規定もできました。

改正民法1012条では、遺言執行者は遺言の内容を実現するため相続財産の管理その他の遺言に必要な一切の行為をする権利義務を有する、改正民法1015条は、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対して直接にその効力を生ずる、としています。

 

その他にも権限等に関する改正がありましたが、ややこしい話なので省略いたします。

遺言の内容と遺言執行者の権限はできるだけ明確に定めておくといいでしょう。

 

改正民法1016条では、遺言執行者の復任権が認められました。相続財産の内容や遺言の内容によっては親族の遺言執行者がご自分で手続を行うことが難しい場合があります。遺言執行者が弁護士等の専門家や法律や手続に詳しい親族の依頼できるということですね。

 

改正民法1013条です。

遺言施行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができません。

遺言で特定の相続人に対して承継させるように定められている不動産について他の相続人が相続登記をして第三者に処分したような場合ですね。

他の相続人の行為は無効です。それは現行法の解釈と変わりません。

しかし、善意の第三者に対して対抗することができないと定めました。上の例では先に登記を経た方が優先します。

また、相続債権者、相続人の債権者は、遺言執行者の有無にかかわらず、相続財産に対して権利を行使できることも定められました。

以前に説明したとおり、相続による権利移動はすべて登記等の対抗要件が必要とされました。遺言執行者がいる場合もそれは変わらないということですね。

 

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個人の自己破産に必要な費用 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の借金問題コラムは、債務整理のうち、個人の自己破産に必要な費用をご説明しようと思います。
弁護士費用と裁判所に納める費用ですね。

 

まずは弁護士費用です。

 

弁護士に自己破産申立て代理を委任するならば弁護士費用が必要ですね。
 

個人申立て(司法書士関与も含めて)もありますが、基本的には弁護士に依頼した方がいいでしょう。
後にお話しする管財事件になる可能性が小さくなりますし、破産管財人を経験することにより手続に精通している弁護士に依頼する方がスムーズに事が進みます。
破産管財人の経験がないと破産手続に精通はできません。

勿論、すべての手続に代理人として同席できる弁護士がいた方が気持ち的にも安心でしょう。

 

弁護士費用は弁護士によっても、案件によっても異なります。
WEBページに事務所の費用目安が記載しています。

 

当事務所は25万円プラス消費税の金額を掲げています。広島では安い事務所だと言われたことが何度かあります。

勿論、安ければいいというわけではないです。

自己破産に関する疑問をすぐに解消してくれ、問題点等を的確に指摘してくれる弁護士に依頼してくださいね。

 

弁護士費用を一度でお支払いできない場合には、通常、分割でお支払いいただく等の便宜を図ってくれます。

弁護士が受任すると債権者に受任通知を出し支払いを停止します、支払停止中に費用を用意していただくわけです。
ボーナスで調整するという方も多いです。


勿論、個人事業主で手間がかなりかかる場合や、自由財産拡張対象可能範囲内に財産が収まらない場合には、弁護士費用をもう少しいただくこともあります。

なお、当事務所では管財事件になるからという理由だけで金額を上げることはしていません。

 

弁護士費用のいただき方は、その方に応じて決めるしかありません。皆さんご事情が異なりますからね。
依頼される弁護士とよく話し合ってください。

時々、費用が払えないから弁護士に辞任されたと当職に改めて依頼される方もいらっしゃいます。支払可能な約束をしないといけません。


ちなみに、当事務所では、個人再生も基本的には自己破産と同じ弁護士費用にしています。
こちらも安いと言われますが・・・

 

勿論、法テラスの民事法律扶助制度を利用される方は、そちらで承ります。
 

法テラスの民事法律扶助とは、一定の資力要件を満たせば、弁護士費用を立て替えてくれ、立替金を5000円程度からの分割で償還できる制度です。


個人の自己破産の場合には、こちらを使われる方が多いです。費用が安いですから。

債権者数によって金額が決まっているのですが、152,600円からです。消費税が変わると金額も変わります。
また、夫婦の同時申し立ての場合には夫婦割引もあります(夫婦でなくとも同一世帯である場合には夫婦割引と同じ扱いをする例もあります)。


ただ、中には、法テラスではなく直接弁護士費用を支払ってもらうことにより財産額を小さくしておいた方がトータルの支出が安くなる場合もありますのでご注意を。
管財費用の兼ね合いです。

また、法テラスを利用する場合には、すぐに弁護士が受任することができません。
まずは法テラスへの申請に必要な書類を弁護士に持って来ていただき、弁護士が申請書を作成して提出し、審査を経てから契約書をもらいます。
通常2週間前後は受任が遅れます。
早く受任通知を送ってもらって督促を止めたい場合には弁護士に相談しないといけません。


生活保護を受給されている方は、さらに使い勝手がいい制度になっております。
生活保護受給者は、法テラスへの償還が事件終了まで猶予されます。
終了時にも生活保護を受給していた場合には償還の免除申請をすれば免除されます。
おまけに官報代や管財事件になった場合の予納金まで法テラスの援助を受けることができます。自己破産の費用がほとんどかからないのです。


なお、免除申請には時間がかかります。それまでに生活保護受給者ではなくなった場合には償還をお願いされるケースも耳にしております。

 

次は裁判所の費用ですね。


自己破産には、同時廃止事件と管財事件があります。


破産法上は、管財事件が原則ですが、個人破産の場合には、割合的には同時廃止事件の方が多いです。

法人の場合には全て管財事件です。

個人破産の場合、広島本庁では同時廃止が6割強から7割弱でしょうか。

 

同時廃止事件は、管財人が選任されない破産手続です。
その場合の費用は、官報掲載のための予納金と、債権者の数に応じた郵券(切手代)になります。

通常は15000円あれば足りるでしょう。

なお、個人再生の場合は30000円を用意してもらっています。

 

管財事件は多額の予納金が必要です。
なぜ多額の予納金が必要かというと、裁判所から選任される破産管財人に対する報酬を裁判所が支払わないといけないためです。

 

広島では、20万円(免責不許可事由が重大な場合の免責調査型管財事件や退職金の評価などが単純に基準を超えている場合)から30万円(不動産がある場合)がスタンダードです。

法人は100万円がスタンダードです。交渉できますが。

予納金は、申立時に用意しておくのが原則です。そのため、予納金の用意のために申立てが遅くなる例もあります。

事実上数か月は待ってくれる場合もありますが(期限を区切って予納命令が出されます)、その間は破産開始決定が出されずに中途半端な状態が続きます。
売却・解約できる資産を売却・解約して費用を捻出してもらうこともあります。

 

なお、個人再生において個人再生委員が選任される場合(こちらも弁護士が選任されます)の予納金は20万円がスタンダードかなと思います。

 

近時、個人破産でも管財事件になるケースが増えてきたように思います。

広島本庁では、現預金は50万円、その他各財産項目の評価額が20万円という基準があり(なお、価値が明らかに乏しい不動産以外の不動産がある場合には無条件に管財事件です)、退職金(現在自己都合退職をした場合の退職金支給見込額の原則8分の1が財産として評価されます。)や保険解約返戻金でひっかかるケースがあります。

また、5年以内に会社経営あるいは個人事業をしている方も管財事件になります。


申立時には、管財事件の扱いを受けないような方策を許される限りで工夫しているところです。

自己破産の費用面で心配をなされている方は、費用も含めて弁護士によくご相談くださいね。

 

債務整理(任意整理個人再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

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相続法改正ポイント3 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続問題コラムとして、2019年日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

遺留分に関する改正点のお話の続きです。

 

【金銭請求に一本化されました】

改正民法1046条1項のお話です。

改正民法1046条1項は、遺留分が侵害された場合、遺留分侵害額に相当する金銭支払のみの請求ができることとしました。
これは大きな改正ですね。

 

改正により、遺留分減殺請求権はなくなり、遺留分侵害額の(金銭)請求権に代わると説明もされています。
慣れ親しんだ言葉がなくなるのは寂しいです。

 

現行法の解釈では、遺留分減殺請求(遺留分減殺通知書を出します)により、当然に物権的効果が生じます(物権的効果とは例えば不動産の所有権から遺留分侵害分の持ち分が移転するというイメージです)。
例えば、相続不動産等については、受遺者・受贈者と遺留分権利行使者の共有状態が生じます。
そこで、遺留分減殺請求訴訟では、まず原告が相続不動産の遺留分侵害分の持ち分移転請求をしなければならず(具体的には持分移転登記手続訴訟)、被告が不動産の持ち分を渡す代わりに金銭賠償を選択して(価額賠償権の行使をして)初めて、原告が金銭請求できる建前となっていました。

勿論、実際の解決は金銭解決による和解で終了することが多かったのですが。

折り合いが付かなければ、不動産等共有状態が作出する可能性があります。
改めて共有物分割請求による換価処分を求めなければ金銭解決あるいは終局的な解決が図れない事態も想定できました。

 

改正民法では、遺留分減殺権者が請求できるのは金銭請求のみとなっております。


現物で渡すのではなく、金銭で渡すということになります。現実に即した改正でしょう。
徒に共有関係を作出することは問題を大きくしかねません。


したがって、「遺留分減殺」を登記原因とする登記もなくなるとの説明もありました。

 

同族中小企業のオーナーの相続にも影響がありますね。


事業承継対策として遺言により後継者に株式を全部相続させても、やり方が悪ければ他の相続人遺留分を侵害します(遺留分侵害がないように遺産の構成及び遺言内容を整理するのが無難です)。他の相続人から遺留分減殺請求があると、理屈上、自社株式について望ましくない共有状態を作出することになってしまいます。

これに対して、改正民法では、遺留分減殺請求権者が請求できるのは金銭請求のみですから、不必要な共有状態を作出することがなくなります。


事業用資産についても同様のことが言えますね。

相続法改正には事業承継対策の効果もあるということでしょう。

 

遺留分侵害額の請求権は形成権であることは現行法の遺留分減殺請求権と変わりません。
請求権を行使して初めて金銭請求権が発生します。
期間制限があるため、内容証明郵便にて通知を行うことが通常です。

 

なお、金銭請求を受けても直ちに現金化できる相続財産がないと困りますね。

そこで、改正民法では、裁判所は、請求があれば金銭請求の全部または一部の支払について相当の期限を許与することができると手当をしています。

 

遺留分侵害額の算定方法】

改正民法1046条2項のお話です。
 

遺留分侵害額は次のように計算されます。

遺留分

- 遺留分権利者が受けた遺贈または特別受益

- 遺留分権利者が取得すべき遺産の価額

+ 遺留分権利者が承継する相続債務の額

です。


計算の枠組みは現行民法の解釈と変わりません。

 

遺留分額は、改正民法1042条の規定により、遺留分額を算定するための財産の価額×遺留分割合×遺留分権利者の法定相続分ですね。

 

寄与分は、遺留分制度においては考慮されません。現行法の解釈どおりです。
そのような制度設計なので仕方がありません。

 

遺留分権利者が承継する相続債務の額は、法定相続分のことですね。
遺言に債務の承継方法の指定があっても、第三者である債権者には対抗できませんからそうなります。


ただし、改正民法1047条3項にて、遺留分侵害額の金銭請求を受けた者が相続債務の弁済等債務消滅行為をした場合には、消滅した債務の限度において、負担債務の消滅を請求できると手当がなされています。

それをすれば、被請求者の遺留分侵害額の請求権者に対する求償権(負担部分を超える債務を弁済すれば他の相続人に求償することができます。法的性質は不当利得返還請求権でしょうか。)は消滅します。遺留分侵害の金銭請求と被請求者の請求権者に対する求償権の相殺的処理を定めたものですね。

 

遺留分侵害の金銭請求に対する負担の順序】


改正民法1047条関係です。


遺贈と贈与があるときは受遺者が先に負担します。

遺贈あるいは贈与が複数ある場合には、同時になされたケースでは目的物の価額の割合に応じて負担します(遺言者が遺言に指定している場合はそれに従います)。
受贈者が複数あり同時になされていないケースでは、後の贈与を受けた者から順次負担します。

 

なお、死因贈与の扱いについては、明文化されず、解釈に委ねられます。
最高裁判例がなく争いがあるから明文化されなかったという説明を目にしました。

 

遺留分制度の改正に関するお話はひとまず終わりです。

ややこしい制度だったのですが、改正によりやや単純化されました。

 

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相続法改正ポイント2 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続問題コラムとして、2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

遺留分制度の話です。2回に分けてお話します。

 

簡単に申し上げますと、遺留分とは、各相続人に最低限の遺産を承継する権利を認めたものです。生前の財産の処分は勿論、被相続人が遺言で自由に財産を処分することは自由です。
しかし、相続人には一定の相続分を保障し(これが遺留分です)、意思表示をすれば遺留分を侵害する遺言や贈与について侵害する部分の効力を失わせて財産を取得させるというわけです。

 

単純なようで、実務上、計算や解決には苦労をする問題ではあります。

 

改正民法1042条から1049条のお話です。

 

【改正民法1042条】

遺留分割合は現在の解釈と変わりません。解釈の明確化のための条文です。

遺留分は、「遺留分を算定するための財産の価額」×遺留分割合です。

 

遺留分割合】

遺留分割合は、直系尊属(父母あるいは祖父母等)のみが相続人である場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1です。これが全体の遺留分になります。

相続人が数人いる場合には、各相続人遺留分は上記割合に自己の法定相続分の割合を乗じたものになります。
健在である父母のみが相続人である場合、父母は各3分の1(全体の遺留分)×2分の1(各父母の相続分)の6分の1(各遺留分)ですね。配偶者と子2人が相続人である場合、配偶者は2分の1×2分の1の4分の1、子は各2分の1×4分の1の各8分の1ですね。

 

なお、兄弟姉妹は遺留分を有さないことは変更がありません。

そのため、お子さんがいないご夫婦が一方配偶者に自宅不動産等の財産を相続させる旨の遺言を書いておけば、一方配偶者が被相続人配偶者の兄弟姉妹との相続争いに巻き込まれることはありません。

 

遺留分算定のための財産の価格】

遺留分を算定するための財産の価額」は次のとおりの計算式で算出します。

 

「被相続人が相続開始の時において有していた財産の価額」 

+ 「贈与した財産の価額」

- 「(被相続人の)債務の全額」

ここも現行法とは変わりません(改正民法1043条1項)

 

【贈与した財産の価額】

遺留分を算定するための財産の価額」に算入される「贈与した財産の価額」について定めるのが、改正民法1044条です。

 

相続人以外の者に対する贈与については、相続開始前の1年間にしたものに限り、その価額が算入されます。
ここは現行法から変更がありません。

相続人に対する贈与については、原則として、相続開始前10年間にしたものに限り、その価額(婚姻もしくは養子縁組または生計の資本として受けた贈与の額に限り-要するに「特別受益」ですね。)が算入されます。
ここが変わりました。

 

いずれも、遺留分権者に損害を加えることを知って行われた贈与については贈与の時期の制限はありません。
ただ、そのような事情が認められるケースは稀です。

 

相続人に対する贈与については、相続開始前10年以内にした贈与であっても特別受益に該当しない限り算入されません。
扶養的な贈与などですね。

 

現行法の解釈として、相続人に対する特別受益は、判例で、特段の事情がない限り、期間の制限なく遺留分減殺の対象となっていました。
それが相続開始前10年間のものに限定されました。取引の安全を考慮したということのようです。

 

なお、少し難しい話ですが、持ち戻し免除の意思表示は遺留分の規定に違反できず遺留分の計算においては効力を有しません。
この点は現行法と変わりません。

 

さらに、「遺留分を算定するための財産の価額」の参入は相続開始前10年間の特別受益に限定されていますが、「遺留分侵害額」の算出においては特別受益の時期は限定されていないと説明されています。
ややこしいですね、実際の計算方法はよくよく確認しないといけません。

 

改正民法1045条は、負担付き贈与の場合、贈与目的の価額から負担の価額を控除した残額を「遺留分を算定するための財産の価額」に参入することとしています。

また、不相当な対価をもってした有償行為(典型的な事例は、不動産を非常に安く売買した場合です。)については、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付き贈与とみなすと規定しました。
 

1000万円の不動産を100万円で売買した場合、遺留分侵害について双方悪意である場合ですが、負担付き贈与として扱い、贈与の目的1000万円から負担の価額100万円を控除した900万円を「遺留分を算定するための財産の価額」に算入するということです。


いずれも、解釈に争いがあった点を明文化した規定です。

 

遺留分に関してほかにも改正があります。次回に続きます。

 

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相続法改正ポイント1 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

民法(相続法)の改正がありました。2019年71日から順次施行されます。

 

ということで、相続法の改正点についてご説明しないといけません。今後、次かいつまんで説明させていただこうと思います。

 

【相続による権利変動に対抗要件が必要なことが明記された】

改正民法899条の2のお話です。相続により相続財産の相続人等への権利移転が生じますね。これを第三者に主張する場合の規定です。
想定できるのは、他の相続人が遺言や遺産分割結果を無視して法定相続分に応じて相続登記をして自分の持ち分を第三者に譲渡した場面、遺言があるあるいは遺産分割協議が成立したにもかかわらず登記をしていない間に他の相続人等が相続登記を代位登記して差押等をした場面でしょうか。

遺産に属する動産類の譲渡も理屈上はその範疇に入りますね。

 

権利の変動を第三者に主張するには対抗要件が必要です。
対抗要件とは、両立しない譲渡などの物権変動がある場合の優劣を決めるものです。
不動産であれば登記、普通乗用車であれば登録ですね。
典型例は、二重に不動産が譲渡されたがどちらが所有者になるのか、という問題で、先に登記を得た方が勝ちます。

 

現在は、最高裁判例に従って、

遺産分割方法の指定(「相続させる」)旨の遺言による権利取得には対抗要件が必要ない、

遺産分割や遺贈(「遺贈する」旨の遺言)による権利変動は対抗要件が必要である、

とされています。

遺言書の書き方によって扱いが違うのです。相続させる旨の遺言による権利の承継は、登記をしなくても第三者に主張できていたのです。
他の相続人が勝手に法定相続分を譲渡してもそれは無効と言えるというわけです。

 

今回の改正では、遺言の場合も遺産分割の場合も統一して、相続分を超える権利の承継については対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとしました。
取引の安全を考慮したものと言われています。

 

改正相続法の施行により、「相続させる」旨も遺言があっても、登記をしないで放っておくのは危険になります。
相続人
1人が相続共有登記を行いその持ち分を第三者に譲渡して登記をしてしまえば、受け継ぐはずであった不動産の一部が他人に渡ってしまいます。
債権者が共有登記をして債務者の持ち分を差し押さえるということも考えられます。
損害あるいは損失を被った分は当該相続人に請求できるのは当然ですが。


遺言がある場合も安心しないでできるだけ早く相続登記をするべきでしょう。


勿論、相続に限らず登記をしないで放置することは百害あって一利なしです。

 

債権を相続した場合も同様です。

 

可分債権(数字で分けられる債権ですね。金銭債権は基本的に可分債権です。)は相続開始と同時に法律上当然に分割されるという判例があります。


なお、預貯金も預貯金債権という債権の一種で可分債権ですが、特殊な扱いを受けます。

少し前までは、預貯金は当然分割されるから遺産分割の対象とはならない(審判で判断してもらえない)という不都合が生じていました(逆に、遺産分割が完了していなくても各相続人法定相続分に応じた預貯金の払戻請求権が認めらるという便宜はありました)。
しかし、最高裁は、預貯金債権については遺産分割の対象となる旨の判例を出しました。平成29年のことで、実務上影響が大きい判例でした。

 

預貯金債権以外の可分債権、例えば貸金返還請求権は、そのままの扱いとなります。

上記のとおり、すべての場合に法定相続分を超える権利の承継を主張するには対抗要件が必要となるわけです。

 

ここで問題があります。債権の第三者対抗要件は、譲渡人からの債務者に対する確定日付がある譲渡通知あるいは債務者からの承諾になります。

相続の場合に譲渡人に当たるのはすべての相続人です。
でも皆で出せないことがありますね。

そこで、改正民法では、相続分を超える債権を承継する相続人が遺言あるいは遺産分割の内容を明らかにして単独で債務者に通知をすることで足りると手当をしています。

 

【可分債務の扱いの明文化】

改正民法902条の2の問題です。可分債務の扱いの明確化です。

 

可分債権の対概念の可分債務(数量的に分けられる債務ですね)も、可分債権と同様、共同相続人間で法定相続分に応じて分割承継されるとされます。
相続人の借金等、相続債務である金銭支払債務は基本的に可分債務です。

相続人に1000万円の相続債務があって相続人が子2人の場合、遺産分割をしなくても500万円の債務を承継していることになります。
怖いですね。

 

遺言や遺産分割によって債務の分割割合を指定あるいは合意したとしても、債権者には対抗できません。
債権者は当事者の合意に拘束されずに請求することができます。
一方、債権者から分割割合の指定あるいは相続人間の合意の内容に従って請求することも許されるとされていました。

 

改正民法902条の2はその考え方を明文化した規定です。

 

債権者は、その気になれば法定相続分に応じた弁済を各相続人に要求できます。
遺産分割協議を進めるにあたっては、この点を前提としなければなりませんね。
債務の整理をどうつけるか、それに応じて資産の配分をどうするのか、意識して合意をしておかなければなりません。

 

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民法改正講座1 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。

民法は私法関係(私人と私人の間の法律関係)を規律する基本法です。

我々弁護士も最も活用している法律といえるでしょう。大事な法律なので、順次、改正点をかいつまんでですが、説明させていただこうと思います。

 

【意思能力の明文化】

第3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

 

意思能力に関する新しい条文です。
これまでも、意思能力を欠く者がした法律行為は無効であるとされていました。改めて明文化したということになります。

 

意思能力が問題となるのは、成年後見制度を利用していないが認知症等で判断能力がない方、あるいは泥酔・薬物などによる一時的な能力の喪失のケースでしょうか。

実務上は、意思能力がなかったとはなかなか認めてもらえません。高齢者の消費者被害などしか使わないかもしれません。
判断能力がなくなった場合には成年後見を開始しておいた方が無難です。

 

なお、意思能力は問題となる法律行為ごとに判断される傾向にあります。
その行為によって必要な能力は異なりますからね。

勿論、意思能力がないとは認められない場合でも、本人の意思決定過程に問題があるのであれば、金融トラブルなどの際の適合性原則違反、説明義務違反(専門家責任)、錯誤、詐欺等を主張して契約の効力を争う、あるいは解除をすることを主張することになります。

 

【錯誤】

旧95条

意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

新95条

1 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくもので、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な物であるときは、取り消すことができる。

 ① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

 ② 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

2 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項による意思表示の取消しをすることができない。

 ① 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

 ② 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき

4 第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

 

まず、錯誤の効果が無効から取消しに変更されました。

無効は最初から法律行為の効力が発生しない、取消しは取り消された初めて法律効果が遡ってなくなるという理論上の違いがあります。
実務上、一番大きい違いは、取消しには取消し通知が必要ですが、無効は当然無効ですので通知行為は必要ないです。
錯誤も、詐欺等ほかの規定と平仄を合わせて(意思決定過程に瑕疵がある点は同じですからね)、今回取消しに変更されました。

 

その他の変更点は、判例法として既に確立している点、講学上争いがない点を明文化したものです。
基本的には、旧法の解釈と変わらないのであろうと思います。

 

錯誤とは勘違いですが、重要な事項に関する勘違いでなければなりません。
契約の目的や社会通念(常識)から、錯誤がなければ本人も普通一般人もその意思表示をしなかったであろうと考えられる重要なものでなければなりません。

 

また、実務上錯誤が出てくるのは、ほぼ動機の錯誤と言われるものです。
その内容の契約をすることについては勘違いがないが、その基礎事情(動機)に勘違いがあるということですね。
それが明文化されました。従前の解釈と同様、動機の表示が必要とされています。
この点は、契約書やパンフレット等から黙示に表示されていても動機の表示がありとされ得ます。

 

実務上、錯誤は、説明義務違反による解除、損害賠償請求、詐欺による取消し、消費者契約法が使えるときには消費者取消権の行使、と一緒に主張することが多いです。
相手方から何らかの不適切な情報提供などによる意思決定への不当な働きかけがあり、本人が騙された!と感じるケースですね。
当職が現在携わっている違約金充当合意の効力を争う控訴審でも、錯誤の有無が争点となっております。一審ではあまり争点とはならなかったのですが、裁判官によって焦点の当て方が異なることは珍しくはありません。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

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