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コラム 2ページ目

知られずに自己破産、個人再生ができるか [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。
 
今回は、自己破産個人再生といった法的債務整理手続が、家族や職場に内緒でもできるケースがあるといったお話です。
基本的には内緒でできるが、協力を仰ぐ必要があるケースでは難しい場合もある、というお話です。
勿論、家計の建て直しには、ご家族の協力があった方がいいのですが。
 
まず、債務整理であっても、任意整理であれば、原則として、誰にも知られることなく債務整理をすることができます。
弁護士と業者間で交渉するだけですからね。
 
ただし、任意整理でも個人信用情報機関に所謂ブラック情報が登録されて、一定期間金融機関の審査に通らなくなります。
近々に家族が車を買う、家を買うなどで家族の連帯保証人を頼まれるようなことがあれば、説明に困ります。
また、月々返済に必要なお金を確保するためには、家族にそれ相応の説明が必要なケースもあるでしょう。
 
次に、債務整理のうち、法的手続である自己破産個人再生となると、手続との関係で家族や職場の協力が必要かどうか検討しなければなりません。
 
家族の協力はどうでしょうか。
自己破産個人再生では、配偶者や同居人が働いている場合には、源泉徴収票や給与明細が提出書類となっています。
その限りで家族の協力が必要なケースがあるのですね。
なお、市県民税課税台帳記載事項証明書の提出も求められますが、これは同一世帯であれば、お一人で全員分のものがとれるはずです。
 
また、家計収支表の提出もしなければなりません。
家計が同一であればその家計全体の収支を記載しなければならず(いろいろな説明の仕方がありますので、弁護士と作成方法をよく相談してください。)、ご自身が家計を把握していない場合には家族の協力が必要ですね。
 
さらに、公共料金等の支払いをしている家計の主口座が家族名義である場合には、その写しの提出も求められます。
 
こうしてみると、家族に内緒で進められる典型的なケースは、奥様の自己破産で、夫の収入資料を保管し、あるいは保管場所を把握していて、家計も管理しているというケースですね。
 
なお、自己破産の場合、管財事件になると、郵便物が破産管財人に転送されてしまいます。郵便物が来ないので、家族におかしいなと思われるでしょう。
 
勿論、家族(特に配偶者)には、事情をお話しできるならした方がいいです。
自己破産個人再生は経済的な立ち直りのために行うものですね。
多かれ少なかれ、家族の協力が必要なものです。
 
親族の協力はどうでしょうか。
 
親族との関係では、同居していない限り協力を乞う必要はありません(同居している場合には収入資料が必要です)。
勿論、債権者である親族に対しては裁判所から通知がいきます。
 
なお、稀なケースですが、親族名義あるいは親族が借りている居宅に間借りしている場合には、居住証明書の提出を求められます。
 
勤務先の協力はどうでしょうか。
 
勤務先との関係では、仮に借金がある場合には通知が行きますのでわかってしまいます。
そのような場合には、自己破産個人再生を申し立てるのも躊躇してしまいますね。
別のコラムで書かせていただきましたが、勤務先からの借金をなくすことを検討します。自己負担金等給与から控除されているものも債務ですのでご注意を。
 
また、一定期間以上(広島本庁では5年以上)働いている正社員の場合には、退職金見込額証明書あるいは就業規則や退職金規程等、退職金見込額を説明することができる資料を提出しなければなりません。
 
見込額証明書を貰うケースは稀で、通常は説明できる資料を提出します。
勤務先に伝えるのは躊躇されますからね。
現在自己都合で退職したとしたら退職金がいくら支給されるかの説明です。
退職が決まっている等の事情がない限り、退職金支給見込額の8分の1が財産として評価されます。
 
退職金制度が最近は複雑になっており、毎回、何を提出するか悩みます。
金額が明確に説明できるよう、就職時期、退職金の計算方法、計算の基礎となるポイントや倍率がわかるものなどを提出します。
手元にない方も多く、その場合は、勤務先からそのような資料も貰わなければいけません。
 
さらに、給与明細の控除欄の中に、資産性があるかもしれない積立や保険・共済等がある場合、残高や契約内容を説明する資料の提出を求められます。
手元にない場合がほとんどなのですが、場合によっては勤務先にお願いせざるを得ないケースもあります。
 
最後に、官報公告というものがあります。自己破産あるいは個人再生をすると、官報に名前と住所が公告されます。
普通の方は見たこともないでしょうが、公告により、金融業者などからダイレクトメールが来ることもあります。
 
家族、親類あるいは勤務先が官報を逐一チェックしていることはなく、直接官報から申立ての事実がわかってしまうことはないでしょうが、完全に秘密にはならないということはご承知おきください。
 
債務整理(任意整理個人再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
http://www.nakata-law.com/
 
http://www.nakata-law.com/smart/


自己破産、個人再生しても携帯・スマホが利用できるか [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。
 
今回は、債務整理のうち、自己破産個人再生をしても携帯電話、スマートフォンが使い続けられるか、についてのお話をします。
 
以前のコラムでも書かせていただいておりますが、聞かれることが多いので再度お話をしようと思います。
 
ポイントは次の2つです。
1 端末代の割賦払いが残っていても1台当たり毎月支払金額が高くなければ通信会社を債権者として扱わなくてもよい
2 申立て前数か月前から料金を抑え、おサイフケータイなどの利用止める
3 通信会社が債権者となっている時も事実上使用継続の同意を得られる場合がある
 
では解説させていただきます。
 
自己破産個人再生を申立てる方のほとんどは携帯電話、スマホを保有されています。
もはや生活必需品といっていいでしょう。
 
携帯、スマホを契約する際に、端末を現金などで購入されることはあまりないですね。
割賦で購入しており、通信料と一緒に月々落とされている例が多いです。
 
割賦残金がある場合は割賦金支払債務を負っている状態です。
自己破産あるいは個人再生をする際には、全ての債務を破産債権として計上して債権者として扱わないといけないルールになっています。
その理屈を突き詰めると、携帯・スマホの割賦債務も破産債権として計上しなければならないです。
 
でも、通信会社を債権者として扱うと、携帯・スマホの契約は解除されてしまうのが原則です。
困りますね。
弁護士も依頼者との連絡が取りづらくなり困ってしまいます。
 
そこで、実務上は、携帯・スマホの割賦代金の分割払いをしている場合であっても、債権者として扱わないケースが許容されています。
勿論、法律で、あるいは裁判所の見解で、債務として扱わなくていいというきまりがあるわけではなく、事実上許容されているという意味です。
 
ただし、無制限ではありません。
毎月の料金が高い場合には、裁判所から請求明細の提出を要求されたりして支払の内訳を確認されます。
割賦債務があることを確認されてしまうと、債権者として扱わない理屈が説明できません。裁判所に債権者として追加するよう指示を受けるとどうしようもありません。
 
裁判所に突っ込まれる料金はどのレベルかは一概に言えません。
経験上は、1台当たり1万5000円以内なら突っ込まれないかなという感覚があります。
1万円前後に抑えて欲しいというところです。
 
自己破産個人再生を申し立てる際には、その数か月前から、要らないアプリを解約し、定額制でなければその利用を抑え、引き落とされる料金を下げておいてください。
 
なお、クレジットカード払いで携帯・スマホ料金を支払っているケースも多いです。
その場合には、ただちに口座振替に支払方法を変更してもらわなければなりません。
支払方法を変更しないと、いつまでもクレジットカードに計上されてしまいます。
クレジットカード会社を債権者として扱うのですが、携帯料金は滞納にはなりませんし、携帯・スマホの契約には影響ありません。
既に通信会社にカード会社が支払済みであり、通信会社には未払いがあるわけではありません。あくまでも債権者はクレジット会社です。
 
おサイフケータイなどのクレジットを利用している方も増えました。
相談を受けた以降は、利用を止めてもらっています。
申立時にはそのような料金が引き落とされていない形にしないといけません。
 
どうしても、クレジットリボ払いが残っており通信会社を債権者として扱わなければならないケースも残ります。
その場合にも諦める必要はありません。
 
弁護士の立場で「絶対」とは言えないのですが、どうしても債権者として扱わないといけない際には、弁護士の受任通知の中で、通信会社に対し、携帯料金の支払いのみ継続する形で、携帯・スマホの継続使用を申し入れています。
経験上、継続使用を認められたケースは多々あります。
 
ほかの確実な方法としては、親族のお金で割賦を返済する、あるいは名義変更するという方法もあります。
この方法がとれるケースは限られますが。
 
自己破産個人再生においても携帯・スマホは使い続けられる方法がある、しかしそれにはきちんと準備をしないといけないというお話でした。
 
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滞納家賃がある場合の自己破産 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
自己破産をしても賃借している自宅物件に住み続けることができるか、家賃滞納がなければ大丈夫、滞納があっても住み続ける方法はある、というお話です。
 
債務整理、特に自己破産をしないといけない状況の方の中には、家賃滞納もあるケースが珍しくありません。
 
引っ越せる場合あるいは引っ越した後であるケースではあまり問題はありません。
滞納家賃を破産債権として免責を得ればいいだけです。
しかし、そのような場合、引っ越したくないあるいは引っ越す費用がないという方がほとんどです。
 
自己破産をしても、賃貸物件に住み続けられるのでしょうか。
 
自己破産をすること自体で、引っ越す必要が生じることは通常ございません。
 
ただし、滞納家賃があるままで自己破産を申し立てると、貸主が債権者となり、裁判所から通知が届いて、契約を解除されることになろうかと思います。
なお、個人再生の場合も同じです。
 
家賃滞納がある場合にどうしたらいいかというと、方法は2つでしょうか。
 
まず、家賃滞納を解消してしまう方法です。
弁護士に受任通知を出してもらってから自己破産の申立ての間に、すなわち債権者への支払いを停止している間に、優先的に滞納家賃を解消してしまいます。
 
他の債権者に対する支払いを止めておいて滞納家賃だけ支払う行為は、破産法上は、偏頗弁済(不公平な弁済)として免責不許可事由に該当します。
しかし、背に腹は代えられません。
やむを得ない事情があるのですから、免責不許可事由の悪質性の程度は小さいと判断されるでしょう。
免責不許可事由あるとされても裁量免責が得られます。
これだけで管財事件になる可能性は小さいと思います。
 
ただし、受任通知後、申立てをいつまでも保留することができません。
申立てが長引いてしまうと弁護士からも辞任されてしまいます。
きちんと計画を立てて、弁護士と打ち合わせた期限内に、滞納家賃を解消していかなければいけません。
 
もう1つの方法としては、家主と交渉して事前に承諾を得てから自己破産を申し立てる方法です。
 
事前に家主に話をして、「滞納家賃は破産債権に計上し、家主を債権者として扱うが、手続後にはきちんと滞納分を支払うので契約を解除しないよう」頼むのですね。
 
滞納家賃は破産債権として免責の対象となります。
しかし、免責の対象となっても、免責後に債務者自らの意思で支払うことは許されています。
家主からのOKが出れば、破産手続廃止後に滞納分の弁済をしていけばいいです。
 
なお、家賃滞納の事実を裁判所に隠せるかというとNOです。
そもそも隠してはいけないことは別に措いても、家賃の支払い状況は通帳などでチェックされていて、不明な点があると確認が来ます。
 
家賃滞納がある場合には、弁護士に状況をきちんと説明し、よくご相談してください。
                   
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相続放棄の際は固定資産税に注意を【相続問題】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
相続問題のうち相続放棄のお話です。
相続放棄の際に気を付けないといけないことの1つに固定資産税があります。
なぜ気を付けないといけないかというと、他の税金と違った特殊な扱いがなされるからです。
 
相続放棄をすれば放棄者は相続人でなくなります。
その効果は被相続人の死亡時から、すなわち初めから相続人でなかったことになります。
相続放棄は、相続債務の負担を免れる目的でされることがほとんどですね。
相続債務はもちろん、滞納税金があっても、相続放棄申述受理証明書を提出すれば納税義務を承継していないとして、放棄した人に督促がなされることはありません。
 
これに対し、固定資産税は、その特殊な扱いにより、相続放棄をしても固定資産税を納めないといけないケースもあるのです。
 
固定資産税は何が特殊なのでしょうか。
 
固定資産税の納税義務者は、原則として賦課期日における固定資産の所有者に課税します。
固定資産税は所有者課税の原則ととっています。
賦課期日は、1月1日です。
所有者とは、土地又は家屋については土地登記簿(もしくは補充課税台帳)に登記・登録されている者をいいます。
その原則の例外として、賦課期日前に登記名義人が死亡した場合は、同日において不動産を現に所有している者に課税されます。
相続人が数人いて遺産分割協議がなされるまでは相続人の共有となります。その場合には、賦課期日現在共有の土地家屋として、数人の相続人が連帯納税義務を負うことになります。
共有名義不動産の固定資産税は、共有者全員に連帯納付義務があります。12月31日以前に亡くなった場合には、遺産分割・相続登記が終わっていない限り、その相続人が納税義務者になります。
 
そうであれば、相続放棄をすれば相続発生時から相続人でなかったことになるので、理屈上、相続放棄をした人には課税されないとなりそうですね。
 
しかし、固定資産税は、台帳課税主義の原則もとられています。
固定資産課税台帳に登録されたところに基づいて固定資産税を課税する原則です。
固定資産税台帳に放棄した相続人が登録されてしまう場合があるのですね。
相続放棄申述書を提出しても受理されるのには一定の期間がかかります。
12月31日までに相続放棄申述受理がなされないことは珍しくありません。
 
恐ろしいことに、固定資産税台帳に登録されていれば、相続放棄をしたとしても、納税通知書が届いた人に納税義務があります。台帳課税主義ですね。
台帳課税主義については判例もその有効性を認めています。
課税上の技術的考慮からという理由です。
しかし、課税をする場面では納得できますが、真実の所有者ではない者に課税した場合の事後救済処置を講じていないことには疑問があります。
 
判例が認めている以上、固定資産税台帳に登録されて納税通知書が来ると、結局は、一旦支払ってから、本来の所有者に対して支払いを求めるほかないです。
求償をするということですね。
 
しかし、相続放棄をする場合には他の相続人も順次相続放棄をして誰も相続人がいなくなるのが通常ですね。その場合は、相続財産法人(相続財産のことです。)に請求をすることになります。
 
これは現実的ではありませんね。
 
このような事態を防ぐ方法があるかというと難しいです。
相続放棄申述受理が1月1日を超える場合には相続放棄の手続中である旨を役所に連絡をすればいいのでしょうか?
しかし、理屈上、相続放棄申述受理がなされていなければまだ相続人であり、やはり台帳に登録されるかもしれません。
 
今のところ明快な解決策はないようです。
ただ、こういう事態が発生することがあるということを事前にわかっておくことは必要ですね。
 
なお、相続放棄申述受理証明書を役所に送付し、課税台帳の記載を変更してもらい、翌年度以降の固定資産税については課税されないようにしてもらった経験があります。
 
相続放棄をなされる際、被相続人所有不動産がある場合には、こういう問題もあることにご注意ください。
 
遺言、相続、遺留分相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
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労働契約法20条 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
最近、労働契約法20条絡みの裁判例をよく目にします。
企業法務のうち労務管理に関する問題ですね。
 
労働契約法第20条をご存知でしょうか。
次のような条文です。
第20条
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
 
分かりにくいですが、有期雇用契約労働者と無期雇用契約労働者(正社員)との間で職務内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定です。
 
「労働条件」には、労働者に対する一切の待遇が含まれます。
賃金、手当に限りません。
「期間の定めがあることにより・・・相違」とは、有期契約労働者と無期契約労働者(正社員)との労働条件の相違が、期間の定めの有無に関連して生じたものであることを意味します。
 
「不合理」の判断は、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であるかを、
1 職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)
2 当該職務の内容および配置の変更の範囲
3 その他の事情
を考慮して評価されます(総合判断)。
その他の事情の代表例は、定年再雇用の事実です。
 
気を付けないといけないのは、不合理かどうかの評価は、各賃金項目・各手当等個別の労働条件の相違毎に判断されます。
待遇の差異が総合的に判断されるわけではありません。
職務の内容等に照らして格差があることの理由が立たない手当が不合理な労働条件の相違と評価されています。
使用者には、個々の手当等毎に不合理ではないことの説明が求められますね。
 
不合理とされた労働条件の定めは無効となります。
無効となっても、有期契約労働者が無期契約労働者の労働条件と同一になるわけではありません。
しかし、不法行為に基づく損害賠償の対象となります。
 
実は、この労働契約法第20条は削除されることが決まっています。
規律がなくなるかというと、勿論、そうではありません。
パートタイム労働法に移管されることになります。
労働契約法第20条が、行政指導の根拠となるパートタイム労働法に移管されるという説明がありました。
改正後は、有期雇用労働者と無期雇用労働者との待遇の差が行政による指導・勧告の対象となるということですね。
 
なお、パートタイム労働法は、正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」です。
改正に伴い、同法の名称が「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関す法律」に改められます。
 
施行日は来年の4月1日です(中小企業は再来年の4月1日)。
 
有期雇用労働者と無期雇用労働者の待遇の違いが不合理であってはいけません。
ただ、企業は様々な要素を考慮して人事施策を決定します。
有期雇用労働者と無期雇用労働者との間の合理的な待遇の差異も存在することは否定できませんね。
企業としては、合理的な待遇の差をつける場合にも、その方法はよくよく吟味しなければならないということです。
前述したように、個々の労働条件毎に不合理ではない待遇の差であることを説明できなければなりません。
結果として職務内容等の相違から合理的に説明できない手当等の名目により待遇の差が生じていれば、仮に総体的には合理的な相違だとしても、効力が否定されることになります。
 
顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
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民法改正講座10【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
今回は、債務の消滅に関する規定です。
 
【第三者の弁済(民法474条)】
債務の弁済は第三者からもすることができますが、債権者保護の規定が整備されました。
 
弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して有効な弁済はできません。正当な利益とは法律上の利益です。
ただし、債務者の意思に反することを知らなかった債権者については第三者弁済が有効になります。
また、債権者は、第三者が債務者の委託を受けていたことを知らない限り、弁済を拒絶することもできます。
 
債務の性質上第三者の弁済を許さないとき(債務者本人が履行しないと意味がない債務は金銭債務以外ではよくありますね。)は第三者弁済ができず、また、当事者の意思表示により第三者弁済を禁止することもできます。
 
【預金又は貯金の口座に対する払い込みによる弁済(民法477条)】
一般的に利用されている振り込みによる弁済の効果について規定が新設されました。
弁済の効力が発生するのは、債権者が預貯金の払戻しを請求する権利を取得した時です。
銀行等に対する預貯金債権発生の時ですね。
 
【弁済の場所及び時間(民法484条)】
弁済の時間移管する規定が追加されました。
法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる、という規定です。
 
【受取証書の交付請求(民法486条)】
弁済と受取証書の交付が同時履行の関係にあることが明示されました。
債務者は、債権者が受取証書の交付をしないときは、弁済の提供に留めて債務不履行責任を免れ、債務の履行を拒絶することができます。
 
【供託(民法494条)】
弁済供託の要件が整理されました。
債権者の受領拒絶を原因とする弁済供託の要件として、債務者による弁済の提供が必要であることが明記されました。これまでも実務上はそういう扱いでしたが。
債権者不確知を原因とする弁済供託は弁済者の無過失が要件となりますが、債権者に弁済者の過失の主張・立証責任を負わせるように規定が整備されました。
 
なお、供託に適しない金銭や有価証券以外の物品を目的物とする供託(物品供託)において、売却代金の供託に関する規定も整備されています(民法497条)。
 
【弁済による代位の要件(民法499条)】
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位します。
債権者から弁済者へ権利が移転するのですね。
今回、弁済について正当な利益を有しない場合でも、債権者の承諾が不要とされました。
 
もっとも、弁済について正当な利益を有しない場合では、代位の対抗要件として、債権譲渡と同様の債権者からの通知または債務者の承諾が必要です(民法500条)。
 
なお、金融機関との取引では、特約により、代位には債権者の承諾が要求されていることと思います。
 
【債権者による担保の喪失等(民法504条)】
弁済をするについて正当な利益を有する者がいる場合には、債権者は担保保存義務を負います。
債権者が担保保存義務に違反した場合には、義務違反の影響に応じて免責を受けることができます。
物上保証人から担保の目的物を譲り受けた第三者及び特定承継人にも担保保存義務違反による免責の効果が承継されることが明記されました。
また、取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、免責の効果が生じないこととされました。
元々、担保の差し替えや一部解除等をすることがある金融機関では特約により担保保存義務の免除を定めていましたが、法律上手当がなされたということです。
 
他にも代位関係の規定が整備されていますが、マニアックすぎるので割愛します。
 
【不法行為等により債権受働債権とする相殺の禁止(民法509条)】
旧法では、債務が不法行為によって生じたときは、債務者がそれを受働債権(相殺の相手の債権)として相殺をすることができませんでした。
債務者が加害者、債権者が被害者に当たり、加害者が被害者に対して債権をもっている場合の相殺の問題ですね。
規律の合理化のための改正がなされています。

相殺禁止の受働債権の範囲が次の2つに限定されています。
1 悪意による不法行為に基づく損害賠償債務
悪意とは、積極的な害意が必要とされています。
不法行為の誘発防止には悪意による損害賠償債務だけを対象としたら済むと考えられたようです。
2 人の生命または身体を侵害する不法行為に基づく損害賠償債務
損害賠償債務は不法行為に限らず、債務不履行責任も含むことになっています。
過失によるものも含まれます。被害者に現実の賠償を受けさせる必要が高いからです。

なお、それら損害賠償債権であっても、他人が譲り受けた債権であるときは、相殺ができるとされました。被害者保護の必要性がありませんからね。
 
【更改に関する規定の整備(民法513条から518条)】
更改は実務上あまり見ることがありませんので簡単に。
更改は、従前の債務に代えて、新たに給付の内容について重要な変更をする、債務者あるいは債権者を交替するもので、従前の債務が消滅します。
更改の意思(従前の債務を消滅させて同一性のない債務を発生させる意思)が必要と明記されました。
通常は、従前の債務を消滅する意思はなく、代物弁済契約、免責的債務引受契約、債権譲渡のケースが多いのではないでしょうか。
なお、債務者の交代は免責的債務引受に近いので、免責的債務引受に関する規律が準用されています。
 
お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
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民法改正講座9【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
今回は、債権譲渡と債務引受のお話です。
 
債権は、原則、譲渡することができます。
債権譲渡の対抗要件(効力を主張する要件)は、譲渡人から債務者に対する通知か債務者の承諾です。
従来、「指名債権」の譲渡という言葉が使われていましたが改正法では「債権」譲渡に変更になりました(改正民法467条)。
 
【譲渡制限に関するもの(民法466条~466条の6)】
譲渡禁止特約に反する債権譲渡の効力も有効であると定められました。
ただし、債務者は、債権譲渡特約について悪意または重過失の譲受人等に対しては、債務の履行を拒み、譲渡人に対する債権消滅事由を対抗できる規律です。
この場合、譲受人は、債務者に対して、譲渡人への履行の催告ができ、相当期間内に履行しない債務者に対しては譲受人も直接請求することができます(以上民法466条)。

それらの規律に合わせて、
譲渡制限特約に反する債権譲渡があった場合の債務者の供託(民法466条の2)
譲渡制限特約に反する債権譲渡の譲渡人に破産開始決定があったときの譲受人の債務者に対する供託請求権(民法466条の3)
譲渡制限禁止特約が強制執行には対抗できないことの明文化(民法466条の4)
が整備されています。

将来債権(これから発生する債権)の譲渡も従来から認められていますが(債権譲渡担保によく利用されます。)、そのことも明文化されました(民法466条の6)。

なお、預貯金債権(約款で譲渡禁止特約が付されています)は、その特殊性から、譲渡禁止特約について譲受人が悪意・重過失の場合の債権譲渡の効力は無効とされています。
ただし、従来どおり、強制執行の差押債権者に対しては対抗できません(民法466条の5)。
預貯金債権の譲渡については、譲渡禁止特約が例外なしに付いており、かつ譲受人の悪意または重過失が容易に認められますので、無効と考えてけっこうです。
 
【債権の譲渡における債務者の抗弁(民法468条)】
異議をとどめない承諾による抗弁の切断制度が廃止されました。
債務者が異議をとどめない承諾をした場合に、譲渡人に対抗することができた事由(抗弁)が主張できなくなるという制度が、債務者にとって酷だからという理由で廃止されたわけです。
債務者は、債権譲渡の対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲渡人に対抗することができます。
 
【債権の譲渡における相殺権(民法469条)】
債権譲渡がなされた場合に債務者が譲受人に対して相殺の抗弁を主張することができる範囲が拡張されました。
反対債権の取得が債権譲渡の対抗要件具備時(譲渡人からの通知または債務者の承諾)より前であれば、反対債権をもって相殺することができます。これは当然ですね。
対抗要件具備時より後に取得した債権であっても、
1対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権
2債権譲渡の対象となった債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権
の場合は相殺に使えます。
前者の例として、委託を受けた保証人が対抗要件具備後に保証債務を履行した場、後者の例として、売買契約の目的物の契約不適合を理由とする買主の損害賠償請求権が、各挙げられています。
 
次は債務引受関係です。

債務引受という言葉をご存知でしょうか。
債務者の交代(免責的債務引受)あるいは追加(併存的債務引受)のことです。
免責的債務引受は、会社の代表者の連帯保証債務の相続処理の際、後継者が他の相続にから引き受ける形で連帯保証債務を引き継ぐケースでよく見ますね。
元々認められていたものですが、条文が追加され整備されました。
 
【債務引受に関する規定の整備(民法470条から472条の3)】
併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、同一の内容の債務を負担します。
引受人は、債務者が引受けの効力が発生した時点で有する抗弁権を主張することができ、債務者が取消権・解除権を有するときは履行拒絶権も有します。
 
免責的債務引受の引受人は、債務者と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れることになります。
債務者が代わるわけですから、勿論、債権者の同意が必要です。
引受人の抗弁権・履行拒絶権に関しては、併存的債務引受と同様です。
引受人は、別途合意がなければ、債務者に対して求償権を取得しません。自分の債務として引き受けるわけですからね。
債権者は、それまで債務者が負担していた債務のために設定されていた担保権または保証を、担保設定者あるいは保証人の承諾を得ることにより、引受人が負担する債務に移転することができます。
 
お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
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自己破産、個人再生における所有権留保自動車名義 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
所有権留保という担保をご存知でしょうか。
クレジットやローンで物品を購入した際、債務を弁済するまで所有権が債権者に留保されるというものです。
今回は自動車の所有権留保に関するお話をします。債務整理のうち、自己破産および個人再生に絡む問題です。
 
所有権留保物件である自動車(車検証を見ると、本来は所有者がファイナンス会社、使用者が債務者になります。)は、法的整理を行うと、債権者によって引き揚げがなされます。
車は返却しないといけないということですね。
ただし、価値が全くなく引き揚げ費用を支弁できないといったケースでは、債権者から所有権を放棄されることもあり得ます。
そのほかは、適正価格以上で親族に購入してもらう(実際にはローンの返却をしてもらう)方法しか、所有権留保車両を手元に残す方法が考え難いところです。
 
自動車の所有権名義が、債権者であるファイナンス会社ではなく、実際に車を販売した販売店である場合があります。
コスト面の理由から販売店名義にされるケースが多いようです。
その場合、自己破産個人再生が絡むと、面倒な話になります。
 
所有権留保は、破産、民事再生上、債権者が破産手続・再生手続外で行使できる担保(別除権)として扱われます。
別除権と認められるには、第三者対抗要件を備えていなければなりません。
対抗要件は自動車の場合は登録です。なお、不動産の抵当権は登記ですね。
 
債権者の所有者名義がなく、第三者たる販売店の所有者名義であるならば、債権者名義の登録がないので、債権者が所有権留保特約による留保所有権の第三者対抗要件を備えていないこととなりそうです。
そうなれば、債権者は担保を主張できず留保所有権は別除権としては扱われない、すなわち車のローンは無担保債権として扱われ、自動車は債務者の財産として扱われることになります。
 
再生手続でのそのような問題について、平成22年最高裁判決がそのような判断をしました。
勿論、判決の理由は単純なものではありません。
 
その後、同判例に基づいて、自動車販売契約書等の改訂がなされていくことになります。
 
簡単に説明すると、所有者名義が販売店であっても別除権として認められて引き揚げがでできるようにするため、法定代位構成をとったものに改訂されていきました。
 
法定代位を簡単に説明すると、弁済をする正当な利益をもつ第三者が弁済をした場合に債権と担保権が当然に第三者に移ることです。
その場合、所有者名義が販売店であっても、販売店の留保所有権を代位するわけですから債権者は法律上当然に代位した担保権を行使することができるというわけです。
 
そして、平成29年の最高裁判決では、保証委託方式(ファイナンス会社が購入者の売買代金債務について保証するもの。集金保証方式ともいう。)のケースで、新しい約款の下での販売店所有名義の自動車についての留保所有権を別除権と認めました。
 
立替払方式(ファイナンス会社が販売会社に立替払いして購入者が分割弁済するもの。)の場合はどうであるか等、その判例の射程範囲ははっきりとはしませんが、一定の方向性が出たということです。
 
債権者が自己の所有者名義登録がなくても留保所有権を主張できる可能性が高まりました。
販売店名義の登録がある以上は他の債権者が期待する財産ではないでしょうから、担保権を認める方向に進むこと自体はおかしいことではないと考えます。
 
自己破産個人再生を申し立てる立場から見ると、自動車の所有権留保が別除権として扱われないということはどういうことを意味するのでしょうか。
 
自己破産個人再生を申し立てる準備をする際には、車検証にて自動車の所有者名義を確認しなければなりませんね。
そして所有者名義と債権者名が異なっていたら、債権者から引き揚げ要請が来ても、漫然と返却をしてはいけません。
返却していいのは別除権として認められるケースだと判断できる場合だけです。
 
仮に、返却してしまった後で、別除権として扱われないケースだと判明した場合はどうなるでしょう。
車の返却行為が、自己破産においては否認対象行為として、個人再生においても同様の理由で清算価値に計上されるものとして、扱われかねません。
個人的にはその理屈には疑問もあるのですが、実務上はそのような流れですね。
 
その結果、自己破産では管財事件になる可能性が高いですし、個人再生でも個人再生委員が選任させる可能性があります。
 
一方、返却すべきではない場合、返さないで自己破産あるいは個人再生を申し立てたとしましょう。
自動車は、当然、債務者の財産として見られますね。
自己破産では、車の価値によっては(同時廃止基準との兼ね合いになります。広島地裁本庁では20万円が基準です。)それだけで管財事件になってしまいます。
個人再生では、車の価値によって、最低弁済額を画する清算価値が跳ね上がることもあり得ます。
 
所有権留保付き自動車の所有者名義が販売店になっているケースは面倒なことはご理解いただけますでしょうか。
車のローンがある場合、弁護士に相談される際には、早めに車検証の写しを持って行って弁護士に見てもらった方がいいですね。
 
なお、軽自動車ではそのような問題は起こりません。
留保所有権の対抗要件は、登録である普通自動車と異なり、引き渡しであり、かつそれは通常備わっています。
専門用語ですが占有改定(債務者が債権者に代わって占有すること)という方法による引き渡しがあると認められるのですね。
他の動産類と同様の扱いです。
                   
債務整理(任意整理個人再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
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民法改正講座8-2【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
多数当事者の債権債務関係の続きです。
多数当事者というのは債権者あるいは債務者が複数いる場合ですね。
 
【委託を受けた保証人の求償権関係(民法459条から460条)】
委託を受けた保証人(普通は委託を受けています。勝手に保証人になることはあまりないですね)の求償権関係の条文が整理されました。
委託を受けた保証人は、弁済等債務消滅行為をした場合に主債務者に求償できます、主債務の期限前の行為と期限後の行為とで求償権の効果が異なります。
一定の場合には事前求償権も認められます(あまり利用するケースはないでしょうが)。
併せて改正民法462条では、委託を受けない保証人の求償権の規定が整備されています。
 
【通知を怠った保証人の求償の制限等(民法463条)】
保証人がいる場合に弁済等債務消滅行為をする場合には、主債務者あるいは保証人に対し通知をしないと一定の法律効果が付されます。事前の通知義務ですね。
正直言ってそのような通知をするということはあまり目にしないのですが、気を付けないといけないですね。
 
保証人が債務消滅行為を行う際の主債務者に対する事前の通知義務が委託を受けた保証人に限定されました。
委託を受けていない保証人の求償権はそもそも主債務者の利益を受けたあるいは受ける限度に限定されているから必要ないというテクニカルな理由です。
委託を受けた保証人が事前通知を怠って債務消滅行為をすると、主債務者が債権者に対抗することができた事由(相殺権など)を保証人の求償権に対し行使できます。
 
逆に、主たる債務者が委託を受けた保証人に対して債務消滅行為をしたことの通知(事後の通知)を怠った場合には、善意の保証人がさらに債務消滅行為をしてしまうと、保証人が自己の債務消滅行為が有効であるとみなすことができます。
 
また、保証人が事後の通知を主債務者に対して怠った場合には、善意の主たる債務者がさらに債務消滅行為をすると、主債務者は自己の債務消滅行為が有効であるとみなすことができます。
 
【根保証の規律の整備(民法465条の2~465条の5)】
根保証とは、被担保債務の限定のない保証ですね。
 
一部規律の対象が、「貸金等根保証契約」から「個人根保証契約」に変更になりました。
貸金等債務が含まれない根保証一般を意味します。
賃貸借契約における根保証契約も対象となることになります。

従来の貸金等の根保証に限定された規律も残っており(元本確定等)、その場合は従来の貸金等根保証契約が「個人貸金等根保証契約」と呼ばれています。
 
個人根保証契約は、極度額を定めなければ無効となることにご注意ください。
所謂、金額の限定がない包括根保証の禁止ですね。
 
【公正証書の作成と保証の効力(民法465条の6)】
これは大きな改正ですね。
会社や個人が融資を受ける際の第三者の保証契約について(事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約または主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約について)、公証人による保証人(個人に限る)の意思確認手続が新設されました。
保証意思宣明公正証書を作成しなければ保証契約が無効となります。
 
ただし、主債務者の事業と関係の深い方が保証人となる多くの保証契約にはルールが適用されないことになります。
主たる債務者が法人である場合の、
理事・取締役・執行役またはこれらに準ずる者、議決権の過半数を有する株主等、
主たる債務者が個人である場合の、
共同事業者、事業に従事している配偶者、
にはこのルールは適用ありません(民法465条の9)。
 
公正証書を作成するというのはけっこう手間ですよね。
第三者個人保証はなくした方がいいというのが世の中の流れなので、その方向に進んでいくことが前提なのかもしれません。
 
また、会社の借入れはわかりやすいですが、個人事業の借入れは「事業のため」と言えるか問題となります。賃貸マンション・アパートの建設資金借入の場合などですね。
金融機関としては広めに解釈するのでしょうね。
 
なお、主たる債務者が、事業のために負担する債務について保証を委託するとき、または主債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証を委託する時は、保証を委託する個人に対し、①財産及び収支の状況、②主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況、③主たる債務の担保に関する情報、を提供するというルール(情報提供義務)も新設されています(民法465条の10)。

仮に主債務者が情報提供義務を懈怠した場合には、保証人が①から③について誤認し保証を契約し、かつ債権者が主債務者の情報提供義務懈怠について知っていたまたは知ることができたなら(知らないことに過失がある場合ですね)、保証人が保証契約を取り消すことができます。
 
保証契約は非常に危険です。
借りたわけでもないのに主債務者と同じ責任を負います。
自分が借りる感覚でないといけません。
主債務者と利害関係が一致していない場合はできないですね。
第三者の保証を要求されるケースでは、主債務者の信用があまりないということを意味します。危険ですね。
 
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固定残業代・定額残業代 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
企業法務のうち労務管理のお話です。
 
時間外労働等の割増賃金を固定・定額で支払うことは直ちに違法ではありません。
固定残業代あるいは定額残業代と呼ばれます。
 
既に最高裁の判例もあるところです。
固定残業代あるいは定額残業代の有効性判断の枠組みを見ていきましょう。
 
まず、時間外労働等に対する対価としての性質を有するものであるか否かが問題となります。
対価性の要件などと呼ばれます。
業務手当等残業代と違う名目で支払われている場合などに問題になります。
時間外労働等に対する対価として支払われていたかどうかは、雇用契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、使用者の説明内容や就労実態等の事情を総合的に勘案して判断されます。
合意内容の認定として一般的に採られる方法ですね。
 
次に、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とに判別できるかという問題があります。
判別要件あるいは明確区分性などと呼ばれます。
そして、判別ができる場合に、割増賃金として支払われた金額が、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを踏まえて判断されることとなっています。
 
これら基準自体が総合的判断を前提とするものですので、基準を基にして具体的事情に応じて総合的に有効性が判断されます。
 
固定残業制・定額残業制を導入・維持するのであれば、有効だと認められるような仕組みを用意しておかなければリスクがありますね。
 
仮に固定残業代・定額残業代の支払いが有効ではないとされると、時間外等割増賃金が未払いとされ(一種のペナルティーである付加金も請求されるでしょう)、しかも割増賃金の計算の基礎に定額支給された手当も入ってしまうということになりますね。
 
そうすると、次のようなことに気を付けないといけません。
 
雇用契約書、労働条件通知書、賃金規程等就業規則にて、定額支給手当が時間外等手当として支払われている旨が明記されていた方がいいでしょう。
明記されていなければ、運用上しっかり時間外等手当として支払われていることが明確になっていないと厳しい判断が予想されます。
また、募集要項も含めて、曖昧な記載も避けなければなりません。
 
勿論、賃金体系上、所定内労働の対価の部分と時間外等割増賃金の部分を明確に区分できるものであることも必要です。
精勤手当の性質等の他要素を組み合せた形の定額支給手当は避けた方が無難です。
労働者が判別できるような計算指標、計算根拠となる時間数を超えた場合の精算方法も明示されることが望ましいです。
 
定額手当の金額は、法令上許される時間外手当等の範囲内の金額であること(法令の趣旨に反する金額であると有効性が否定されかねません)、時間外労働等の対価としての合理的な支給根拠が説明できる金額であること(それ以外に合理的な支給根拠がないこと、実際の勤務実態とほぼ合致していること等)も必要でしょう。
全従業員一律の額であると合理的な説明ができないかもしれませんね。
 
運用上も、支給時に支給対象の時間労働等の時間数と残業手当の額が明示されていること、
固定残業代によってまかなわれる時間数を超えた場合の精算をする取り扱いが確立していることも要請されます。
 
残業代等の固定支払いは、支払方法について法定されていないため、一概に無効とはされない傾向ですが、事案によっては無効と判断されかねません。
リスクを排除するためには、上述のような手当をしなければなりません。
 
固定残業制のメリットの1つは労務管理の簡便化でしょうか。
上述のように見ていくと、リスクを排除するには結局手間がかかるような気がします。
一定の無駄なコストも生じるわけですし、その分を賞与あるいは成果的報酬に反映する方が労働者のモチベーションの向上につながる経営戦略上のメリットがあるような気がしています。
 
顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
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